著者
浦野 慎一 高橋 英紀 町村 尚 平野 高司 山梨 光訓 上田 宏 堀口 郁夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

陸地水体と生物生産の相互関係を明らかにするため、北海道の洞爺湖とその周辺を対象に水温、気温、風向風速等を観測し、貯熱量と湖効果を検討した。またアフリカのザンベジ河氾濫原で水文気象観測を実施し、氾濫原の特性と水田開発の関係を検討した。さらに基礎的研究として、様々な植生における蒸発散量を観測し、比較した。以上のことを13編の論文にまとめ、報告書(158ページ)にまとめた。得られた結果の概要は以下のとおりである。洞爺湖では、水体の貯熱量が大きいため、陸地と湖水面における有効エネルギーの季節変化に約半年の位相のズレが確認され、この位相のズレが湖効果の原因になっていることがわかった。また洞爺湖の湖効果は相対的に冬期より夏期に強く出現すること、地域的には夏期の一般風の主風向が南よりであるため北側の湖岸で強く出現することがわかった。以上のことから、夏期の生物生産最盛期に湖効果が出現する地域では、気温を考慮してその地域に適切な作目を選ぶ必要があると考えられた。ザンベジ河氾濫原では、蒸発散量は雨季終了後および冷涼乾期に大きな減少が見られなかった。これは周辺台地から供給される地下水の流れによるものと推察され、水田開発を行うにはこのような地下水流を考慮に入れる必要があると考えられた。また、基礎的研究として森林、トーモロコシ畑、牧草地の蒸発散量を比較した結果、牧草地ではデカップリングファクターが最も大きく、相対的に空気力学的作用よりも熱収支的作用の方が蒸発散量に大きく影響していることがわかった。