著者
上田 宏
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.123-129, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
20

サケがどのように生まれた川(母川)を覚えて回帰するかは,生物学上の大きな謎の一つである.北洋から北海道の母川に回帰するシロザケ,および湖に生息するヒメマスとサクラマスを用いて,外洋におけるナビゲーションのメカニズム,ホルモンによる回遊行動の制御メカニズム,および母川のニオイを識別するメカニズムなどを多角的に解析した.動物行動学的には視覚機能を用いて直線的に回帰する母川回帰行動,生殖生理学的には脳から分泌されるサケ型生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(sGnRH)が母川回帰行動を主導的に調節すること,神経生理学的には嗅覚機能を用いて各河川水に溶解している河川固有なアミノ酸組成をサケが識別していることなどが明らかになってきた.
著者
竹内 愛 高 峰美 田村 敦子 尼崎 正路 上田 宏隆
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.717-722, 2017 (Released:2017-11-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

がん患者のせん妄改善を目的として,院内でクエチアピン坐剤を製剤し,その有用性について検討した.2011年4月から2014年10月までに,緩和ケア病棟に入院した患者のべ644例のうち,クエチアピン坐剤を使用した108例の,後方視的診療録調査を行った.患者背景・投与状況・せん妄による興奮症状の改善度〔Agitation Distress Scale(以下ADS)による過活動型せん妄の改善度の評価〕・副作用について検討した.全体群・クエチアピン坐剤単独投与群・他剤併用群いずれも,ADS値は坐剤投与前後で有意な低下を認め(p<0.0001),せん妄改善に貢献する可能性が示唆された.副作用についてはクエチアピン内服と同等程度であり,また,坐剤という剤型ゆえの問題も認めず,簡便かつ安全に使用可能と判断した.以上より,がん患者のせん妄に対して,クエチアピン坐剤が有用であると考えられた.
著者
上田 宏和 Hirokazu Ueda
出版者
創価大学法学会
雑誌
創価法学 (ISSN:03883019)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.01-32, 2016-07-20
著者
松永 佳世子 矢崎 喜朔 上田 宏 早川 律子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.269-275, 1979 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11

口唇にのみ乾燥落屑及び暗紫色の色素沈着をきたした37才主婦例につき, 使用化粧品, タール色素, 1-phenyhzo-2-naphthol, 使用口紅の各成分, 使用可能な化粧品を選定するためのパッチテストなど, 計5回にわたるパッチテストを施行した。原因としてR-219の不純物である1-phenylazo-2-naphtholであることを確認した。又, 使用口紅, 同製品に使用されたR-219及び1-phenylazo-2-naphtholのパッチテスト部位を2週後に生検し, 著明な真皮上層の小円形細胞の浸潤, 基底層の液状変性, 及びincontinentia pigmenti histologicaを認めた。以上より本症例を使用口紅に含有されたR-219の不純物である1-phenylazo-2-naphtholによる黒皮症型の色素沈着例であると考えた。
著者
冨高 晶子 松永 佳世子 秋田 浩孝 鈴木 加余子 上田 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.327-334, 2000-04-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ラテックスアレルギー(LA)と果物の交差反応はlatex fruit syndromeと呼ばれている.今回, 栗によるアナフィラキシー症状(AP)を発症したLAの4例を報告する.全例アトピー疾患を合併した看護婦で, LAが先行していた.症例により摂取した栗の加工法, 皮膚との接触の有無, 臨床経過が異なっていた.栗のプリックテストは全例陽性であったが, 血清中の特異IgE抗体(sIgE)は2例のみ陽性であった.sIgEが陰性の場合にもAPが出現する症例を経験したことから, sIgEが陰性であっても注意が必要であることが示唆された.経過を観察し得た2症例のうち, 頻回に抗原に暴露される症例は, sIgEは高くなり, 抗原刺激を減らし得た症例ではsIgEは低下した.また, ラテックスと栗の交差反応において主要抗原とされるheveinと患者血清とのELISAにおいて, 自験例4例は正常コントロール12例に比べ有意に高い値を示した.今後, LA患者はAPや接触蕁麻疹の報告がある果物の摂取は避ける必要があると考える.
著者
冨高 晶子 松永 佳世子 秋田 浩孝 鈴木 加余子 上田 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.327-334, 2000
参考文献数
21
被引用文献数
3

ラテックスアレルギー(LA)と果物の交差反応はlatex fruit syndromeと呼ばれている.今回, 栗によるアナフィラキシー症状(AP)を発症したLAの4例を報告する.全例アトピー疾患を合併した看護婦で, LAが先行していた.症例により摂取した栗の加工法, 皮膚との接触の有無, 臨床経過が異なっていた.栗のプリックテストは全例陽性であったが, 血清中の特異IgE抗体(sIgE)は2例のみ陽性であった.sIgEが陰性の場合にもAPが出現する症例を経験したことから, sIgEが陰性であっても注意が必要であることが示唆された.経過を観察し得た2症例のうち, 頻回に抗原に暴露される症例は, sIgEは高くなり, 抗原刺激を減らし得た症例ではsIgEは低下した.また, ラテックスと栗の交差反応において主要抗原とされるheveinと患者血清とのELISAにおいて, 自験例4例は正常コントロール12例に比べ有意に高い値を示した.今後, LA患者はAPや接触蕁麻疹の報告がある果物の摂取は避ける必要があると考える.
著者
請井 智香子 上田 宏
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.588-592, 1982

散瞳剤を点眼毎に, 軽度の結膜炎, 眼囲の腫脹, 紅斑, 掻痒感が出現する患者を経験し, パッチテストを実施した。その結果, 塩酸フェニレフリンによるアレルギー性接触皮膚炎であることが判明した。光線過敏はみられなかった。交作感作物質の検索は, 7種の構造類似物質のパッチテストを実施したが, 陽性反応はみられなかった。<BR>本症例において重要な事項は, 塩酸フェニクフリンの代わりに, エピネフリン, アトロピン, サイクロペントレートが安全に使用できることである。
著者
高橋 誠 三〓 健司 上田 宏一郎 中辻 浩喜 宿野部 猛 近藤 誠司
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.155-160, 2005-02-01 (Released:2017-10-03)
参考文献数
12
被引用文献数
3

北海道北部草地酪農地域の酪農家約100戸を対象に、共済組合獣医診療記録および乳検記録をもとに、各戸の飼養形態についてアンケート調査を行い、放牧の有無と乳牛の疾病発生状況について検討した。各農家の経産牛治療記録および牛乳生産記録はオホーツク農業科学研究センターで解析した。アンケート調査は各経営の飼養頭数、草地面積、放牧の有無・方式について行った。アンケートに回答した46戸の平均で、乳量は8,127.2kg/305日、経産牛頭数は71.7頭、放牧地面積は8.6ha、年間の治療回数は1.2回/頭で、年間の1頭あたり治療回数は個体乳量が高いほど、また草地面積が少ないほど高かった。46戸のうち、昼夜放牧農家7戸、時間制限放牧農家16戸、通年舎飼い農家9戸を選び、飼養形態ごとに解析した。各飼養形態間で平均乳量に差はなかった。1年1頭あたりの治療回数で、泌乳器系では昼夜放牧農家が多く、運動器系では昼夜放牧農家および通年舎飼い農家が少なかったが、有意な差ではなかった。妊娠分娩関係および生殖器系をあわせて繁殖関係とすると、治療回数/頭/年は昼夜放牧農家で0.22回と、時間制限放牧農家の0.41および通年舎飼い農家の0.40回より有意に少なかった(P<0.05)。
著者
松永 佳世子 上田 宏
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.177-186, 1993 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6

アトピー性皮膚炎患者21名に対し, 皮脂類似成分, 油性成分およびコメ胚芽油を含有する乾燥肌用入浴剤バスキーナを使用し, その有用性について検討を行った。皮疹部位の乾燥, 鱗屑, 亀裂に対する改善は, それぞれ89.5%, 89.5%, 90.0%の症例に認められ, また, 皮疹周辺部の乾燥皮膚も, 84.2%の症例に改善が認められた。治療補助効果では改善以上が76.2%, 有用性においても有用以上が76.2%と良好な成績が得られた。皮疹部位における角層水分含有量測定では, 試験前に比し試験後で角質水分含有量が有意 (p>0.05) に高い結果であった。以上より, バスキーナはアトピー性皮膚炎患者に対し, 簡便かつ有用性の高い優れた入浴剤であると考えられる。
著者
鈴木 加余子 松永 佳世子 上田 宏
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.130-135, 1999 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

アトピー性皮膚炎 (AD) 患者皮膚への洗濯用合成洗剤の刺激性を検討するために, AD患者10例を対象に, 主な界面活性剤成分であるアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム (LAS) の衣類残留濃度を測定した。その結果をふまえて, 別のAD患者20例にLASをパッチテストした結果, LAS1000ppmにわずかな紅斑を認めたのは1例であり, 洗濯施行後の衣類に残留している濃度でのLASのAD患者皮膚への刺激性は低いと推測した。一方, 最初の残留濃度測定試験で1300ppmであった患者がすすぎ方法を変更したところ, その濃度が53ppmに低下したことから, 洗濯施行時のすすぎ方法は洗剤の残留濃度を低くする点において重要と考えた。
著者
上田 宏高 門林 理恵子 萩野 浩明 塚本 昌彦 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.414-423, 1998-02-15
被引用文献数
2

本稿では,分散型知識ベースシステムを用いたメール配送システムの構築について述べる.筆者らの研究グループでは,グループ通信をサポートする従来のシステムでは不完全であった送受信双方の選別要求を満たすことを目的として,推論機構によるグループの動的構成手法を用いたメール配送システムMILD (MaIL Distribution system)を開発し,2年間にわたり運用を進めてきた.MILDは指定された条件を満たすユーザからなるグループを知識ベースシステムを用いて動的に構成し,電子メールを配送するシステムである.しかし,運用を進めるうちに,知識管理の困難化,配送遅延の増大等MILDが集中管理型システムであることに起因する問題点が明らかになってきた.今回,筆者らはこれらの問題点を解決するため,MILDの分散化を行った.システムおよび知識を分散化することによって,MILDは,広範囲にわたるユーザが柔軟なグループ通信を容易に利用できるシステムとなった.In this paper,we present the design and implementation of a decentralized mail distribution system using knowledge-base systems.In these two years,we have developed and maintained a system for distributing mails using a reasoning-based dynamic group construction method,called MILD(MaIL Distribution system).However,in a practical use,various problems have identified to be serious.One of them is the difficulty in managing large size of knowledge-base,and another is the increase of the delay time for mail distribution caused by the long reasoning time.We consider that the centralized management of MILD is the main reason for such problems.Therefore,we designed and implemented a new version of MILD,which we call MILD3,where servers and knowledge-bases are decentralized onto several hosts.In MILD3,each knowledge-base is managed independently by each organization,and it can be used in an integrated way for mail distribution.Furthermore,because of decrease of the reasoning time,it becomes possible to distribute mails in a shorter time than the previous MILDs.As the result,the new version of the MILD can provide a more flexible group communication for a large number of its users.