- 著者
-
山瀬 豊
- 出版者
- 一般社団法人 日本原子力学会
- 雑誌
- 日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.12, pp.828-832, 2019 (Released:2020-04-02)
- 参考文献数
- 3
高エネルギー電子加速器を用いた電子線滅菌は,滅菌法では比較的新しい方法であるが,近年,医療機器,医薬品容器等の人体に対するリスクの高い医療用品の製造時の滅菌法として一般的な滅菌法となってきた。その背景には,高エネルギーの電子線は,最終梱包のまま短時間に低温で透過処理できることや,従来から主流であったエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌のEOの発がん性の問題関連の規制等,滅菌バリデーション(科学的妥当性の検証)要求,無菌性保証など品質規格要求等も厳しくなったことなどがある。さらに近年は,ガンマ線滅菌の線源高騰,環境,セキュリティ,リスク管理等も重視されEOG滅菌だけでなくガンマ線滅菌からも電子線滅菌に切り替えるケースも増えている。今後は,コンプライアンス順守やCSRの推進等の社会的な取り組みを背景に,環境,労働環境,安全,品質などの対策強化などに伴い,医療機器,医薬品等の電子線滅菌はさらに増加していくことが考えられる。