著者
岡本 孝司
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-31, 2012 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

原子力発電所の安全を担保する思想は深層防護である。東日本大震災による発電所への影響を深層防護に従い検討を行うと,いかなる場合においても,電源を供給できるようにすることが必須であることが見えてくる。全交流電源喪失,全交流電源系統喪失,全電源喪失など,発生確率とリスクに応じて,電源に対する対策を考えていくことが重要である。わずかな電源容量であっても,ある程度の時間は稼ぐことができる。事象を整理し,俯瞰的に評価することで,プラント全体のリスクを低減していくことが重要である。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.468-472, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
4

地球温暖化というと,暑い夏がさらに暑くなることだと思われがちであるけれども,どちらかというと寒い冬が暖かくなって年間平均で気温が高くなるなど,年々の長期的変化に伴い,様々な現象の変動パターンがこれまでになく激変するということである。地球環境の変動をこれまでに蓄積してきたデータから単純に予測することはますます困難になっている。予測もつかないようないことを予測することが求められており,その予測技術を確立していくために,全球における高精度,広域,そして継続した観測がますます必要とされている。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.336-340, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

海洋の科学と科学技術について,いまどんな研究が行われているのか,原子力にかかわっている方々にわかりやすく紹介するという機会をいただいた。地球は水の惑星といわれるが,それは地球の表面の2/3が海水で覆われているばかりでなく,固体地球の内部にも水の循環があり,そして巨大な山脈もかつては海の底だったからである。研究の分野は広く,専門分野が異なれば,なかなか理解も難しい。しかし分野が異なっても共通するのは人の情熱と努力である。自然の不思議に魅せられて科学するのは人である。科学技術を研究開発するのも,機器を操作し,データを管理するのも,また必要な予算を獲得して業務を管理するのも人である。さらに成果を享受し,評価するのも人である。人は国により,時代により,状況によってさまざまに異なる。しかし人を抜きに科学技術を語ることも,理解することも,役に立てることもできはしない。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が進めている海洋の科学と科学技術を,研究開発にたずさわる人たち(ここではアトムと呼ぶ)の目線で解説していくことにしたい。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.409-413, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

現代の地球科学における重要なキーワードは地球内部の水循環である。水を含んだ海洋地殻が大陸地殻の下にもぐりこんでいくときに,水は絞りだされて循環する。熱水現象も,地殻内微生物の存在も,また地震発生のメカニズムも地殻内水循環が重要な役割を果たしている。今回は私たちの生活に極めて身近な存在である微生物の利用と生物の進化,そして海溝型の巨大地震の研究と防災について考える。
著者
澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.776-779, 2014 (Released:2020-02-19)
参考文献数
11

正力大臣車中談(案)という風変わりな標題の史料がある。昭和31年の原子力委員会で諮られている。正力は東京から選挙区富山に電車でお国入りする車中で,随行記者団にさまざまな真情を披瀝した。同年1月中旬のお国入りの際には,原子力委員会発足直後の声明書の内容に関して談じた。原子力委員の湯川は,新聞紙面に踊った正力の車中談に接し,困惑と憤りを露にした。そんな背景に湯川ら物理学者と正力ら政治家の思惑の違いが根強くあった。それが,結果的に原子力ムラと御用学者を生む発端になったのではないか。史料をもとに論考する。
著者
山澤 弘実
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.811-815, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
6

僅かではあるが再処理施設や原子炉から放出される放射性核種の中で,炭素14が最も線量寄与が大きいことは,意外と知られていない事実である。環境中に放出された炭素14が我々に与える影響を合理的に評価するためには,環境中物質の中で最もダイナミックな炭素の循環に紛れ込んだ炭素14の動態把握が必要である。これまでのFP核種の環境移行研究とは異なる炭素14固有の特徴を踏まえて,研究の現状を述べる。
著者
柿内 秀樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.537-541, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
13

環境中には天然起源のトリチウムと人為起源のトリチウムが存在する。まずトリチウムの基礎的な知見を整理するとともに人為起源のこれまでのトリチウムについて概観する。またトリチウムは水素の同位体であるため,環境中に広く分布している。この環境中のトリチウムを分析するための手法について現状を紹介する。
著者
石田 健二 岩井 敏 仙波 毅 福地 命 當麻 秀樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.455-459, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
14

がんは複数の遺伝子に段階的に損傷および変異が蓄積することによって起こるという「多段階発がん説」が,唯一の発がんメカニズムとして定着していた。しかし近年,ある特定の遺伝子が一つ変異するだけで短期間に正常細胞ががん化してしまうというメカニズムが存在する可能性のあることが報告されてきている1)。このような遺伝子の変異を「ドライバー変異」と呼ぶ。このタイプのがんの発生は限られており,小児がんや,白血病のような血液がんに多く見られるといわれている。その一例として,チェルノブイリ事故で多発した小児甲状腺がんが注目されている。本稿ではチェルノブイリ事故後の小児甲状腺がん発症のモデル,すなわち放射線誘発による遺伝子変異した細胞が原因ではなく,放射線による細胞死の誘導と組織微小環境の攪乱により,自然発生(散発性)の遺伝子変異細胞が,増殖を開始して発がんするというモデルについて解説する。