著者
山田 久陽 池田 明子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.2, pp.73-77, 2009 (Released:2009-02-13)
参考文献数
30
被引用文献数
1 3

男性型脱毛症(Androgenetic alopecia, AGA)は,遺伝的背景および男性ホルモンによって主に男性に生ずる病態で,頭頂部や前頭部の毛髪が細く短くなり,外観上,薄毛と認識されるようになる.AGAは生死に関わる疾患ではないが,薄毛に悩むヒトは多く,AGA治療薬の開発に注目が集まっている.AGA治療薬開発のターゲットとしては,STAT3,BMP,WNTおよびSHHなど毛周期の休止期から成長期への移行,すなわち発毛促進作用に関係する分子と,男性ホルモン受容体およびTGF-βなど,短縮した成長期を本来の長さに戻し,太い毛を育てる作用に関係する分子が考えられる.治療効果を有する化合物は,in vitroの系で毛乳頭,毛包上皮あるいはそれらの共存培養系,毛包の器官培養によりスクリーニング可能である.in vivoではマウスで休止期から成長期への誘導あるいは成長期の延長が評価でき,ヒトに酷似したAGAの病態を発症するベニガオザルを用いた評価も行われる.
著者
山田 久陽
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.3, pp.154-157, 2009 (Released:2009-03-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

腎臓は,組織の“不均一性”が高く,薬物により腎臓のさまざまな部位が障害される.障害部位の特定を含めた腎毒性の評価は,ラットを用いた一般毒性試験においても検査項目を充実させることにより可能である.特に尿検査は,鋭敏で動物に負荷を与えない非侵襲的な検査として汎用される.糸球体障害の検出には,通常濾過されない血中高分子タンパクおよびアルブミンなどが有用である.近位尿細管障害には,同部位に局在するNAG,γ-GTP,α-GSTなどの酵素やKIM-1およびclusterinなどの局在タンパク,同部位で再吸収されるβ2-microglobulinなどの低分子タンパク,さらに,遠位尿細管障害ではμ-GSTなどの局在タンパクの測定が有用である.腎毒性の評価には,各部位のマーカーを2種以上選定して,その変化を経日的に解析し,最終的には腎臓の病理組織学的所見を加味して総合的に変化の程度や部位を判定すべきである.