著者
山田 千春 末安 明美 西山 章弘
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.73-82, 2021 (Released:2021-12-24)
参考文献数
12

本研究は、高齢者のライフヒストリー・インタビューで語られる経験をもとに、高齢者の価値観形成過程に着目しながら、高齢者がどのような価値観に基づいて今を生きているのか、看護系大学生(以下、学生)がどのように捉えているのかを明らかにすることである。学生が捉えた高齢者の価値観形成過程としては、【つらい過去を生きる力に転換】【積み重ねた経験による価値観の形成】【悔いのない生き方の模索】【生き方・死に方の再定義】が抽出された。また、高齢者を支える価値観としては、【平和な日常への感謝】【ありのままの心とからだの受容】【自己への信頼】【人とのつながり】【世代を紡ぐ役割】が明らかとなった。高齢者の長い人生の時間軸に沿った価値観形成過程や、“平和”“自己受容” “人間関係”など現在の高齢者を支えている価値観に着目することは、学生の高齢者の見方を変化させるきっかけとなり、高齢者理解をより深化させる機会となる。
著者
山田 千春
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.179-198, 2014-06-30

全専各連は,専修学校が学校教育法第1 条に規定されていないために起こる取り扱いでの格差を改善しようと,専修学校の1 条校化運動を推進してきた。それに関する議論は,専門学校を中心に行われているので,本稿では,高等専修学校に焦点を当て,筆者が北海道の高等専修学校の管理職に行った聞き取り調査をもとに,1 条校化をめぐる論点の整理を試みた。調査の結果,小規模校では,資格のある教員の確保や施設面での充実を義務付けられる点から専修学校のままを望んでいた。一方,中規模校では,教員数の増加や教育施設のより一層の充実を期待し,1 条校化を望んでいた。それらを踏まえて,高等専修学校の1 条校化をめぐる論点として,1,全専各連の1 条校化の要望と現場との間に意見のギャップがある点,2,格差の改善を優先するのか,教育における自由度を優先するかという点,3,教員資格の基準について,4,学園内における他の学校との関係性の問題,以上4 つの論点を見出すことができた。
著者
山田 千春
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.207-223, 2013-06-30

高等学校以外に中学生の進学先として,高等専修学校がある。高等学校の量的な充足により,規模は減少しているものの,ある一定数の生徒を確保していることから,高等専修学校の教育に独自の特徴があると考え,後期中等教育における役割を検討する必要がある。関連する専修学校の先行研究の整理を行った結果,専門学校を青年の職業教育機関として捉え,国がその教育をどこまで保障するのかという公教育の議論が十分になされていない点,専門学校の教育の多様性を踏まえながら,それを類型化し,教育の特徴を整理していくことが十分に行われていない点,そこで学ぶ学生・生徒に焦点を当てた研究が少なすぎる点,以上3 点が指摘できる。今後の高等専修学校における研究課題は,明確な目的意識を持たずに入学してくる生徒たちが,高等専修学校の教育により,どのように自らの職業観を形成しているのかを検討し,高等専修学校における公的な支援の在り方を議論することである。