著者
長尾 雄太
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-10, 2013 (Released:2022-05-20)
参考文献数
59
被引用文献数
1

本研究の目的は、看護における傾聴の概念が持つ特性を明らかにすることである。「傾聴」をタイトル、抄録に含む40文献をRodgersの手法を用いて概念分析を行い、属性、先行要件、帰結について検討した。その結果、傾聴の先行要件には、患者がストレスを抱えていること、看護師が傾聴の必要性を判断し環境を整えることが挙げられた。属性は、看護師が患者に共感し受容することであり、コミュニケーションの構成要素、ケアの基本として位置付けられていた。傾聴の帰結として、患者-看護師間の信頼関係構築により、患者の問題解決に向けた行動へと至ること、看護師は患者への理解が深まることで必要なケアの提供が可能となることが示された。さらに、看護師にとっては傾聴によりアイデンティティが強化される一方、患者の辛さや苦しさを傾聴することで、看護師が情緒的に巻き込まれる危険性があることが示唆された。
著者
外 千夏 玉熊 和子 葛西 敦子
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.15-21, 2022 (Released:2022-08-12)
参考文献数
29

本研究は、日本における月経に関する教育介入研究を概観し、月経のセルフケア能力育成に向けた教育プログラム開発の基礎資料を得ることを目的とした。文献は医学中央雑誌web版で検索し、検索キーワードとして「月経」「教育プログラム」「月経教育」等を入力し、原著論文89件が検索された。その中から抽出した7件の教育介入研究を対象に、教育方法と内容を分析した。結果、教育方法は、対象を大学生としていた研究が6件、教育方法に行動科学理論を使用した研究が2件で、主に対面講義等で教育介入し、介入直後の評価では介入効果があったと報告していた。教育内容は、6件が月経随伴症状とセルフケア行動、1件が月経周期の異常であった。今後は、中高生を対象に行動変容を目的とした介入を行い、介入後は月経へのセルフケアの継続をフォローアップする必要がある。また、教育内容は月経の正常と異常及び低用量経口避妊薬(避妊用ピル、Oral contraceptive、以下OC)・LEP製剤(Low dose estrogen-progestin、以下LEP)について取り扱うことが必要との示唆を得た。
著者
成田 榛名 谷川 涼子 尾崎 麻理 石田 賢哉
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.30-46, 2023 (Released:2023-02-17)
参考文献数
29

医療的ケア児の療育経験がある保護者を対象に、医療的ケア児及び保護者への福祉支援体制の強化に向けて、保護者が経験した療育に関連する生活上の困難を把握し、福祉ニーズを明らかにすることが本研究の目的である。3~15歳の医療的ケア児5名の保護者6名(うち1組は両親)を対象に、インタビュー調査を実施し、質的帰納的な分析をおこなった。生活上の困難として【保護者同士のつながりの欠如】、【相談窓口での対応】、【退院時の対応】、【活用できる医療・福祉施設の少なさ】、【きょうだい児へのサポートの不足】の5カテゴリが抽出された。この結果から、保護者の有する福祉ニーズとして、適切なサービス利用と精神面のケアの充実を求めていること、保護者は医療的ケア児の入院生活から在宅生活への移行、保育施設へのスムーズな入所、きょうだい児への支援など、医療的ケア児の成長に応じた切れ目ない支援があった。医療的ケア児の在宅生活を支えるためには、医療的ケア児及び保護者を適切な制度、サービスにつなぎ、家族全体を把握して総合的に支援する医療的ケア児等コーディネーターが大いに期待される。
著者
村上 成明
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11, 2019 (Released:2021-12-14)
参考文献数
10

看護師の知識には客体化できない暗黙知が含まれ、具体的な経験から積極的に知識を掘り起こさなければ真の強味とはならない。また、知識は人間同士の関係性の産物であり、知識を共有する構造と過程の理解が不可欠である。そこで、看護ユニット内の知識共有に影響を与えている要因とマネジャーの判断および実践を、看護師長20名への半構成的面接を通して捉え、グラウンデッド・セオリー・メソッドで分析した。その結果、10個のパラダイムが抽出され、それらは知識共同体の成熟を伴う知識共有過程を構成していた。そのうちの6個は知識共有の進展過程を構成しており、“実践による練磨”→“材料としての知識”→“旬の役割”→“知識の常識化”→“態度の伝播”→“共同体の成熟”というステップで進展し、個人知が集合知として洗練され共有される。また、同時に知識共同体が成熟していき、そのためには肯定的で開示的な姿勢が重要との帰結に至った。
著者
山田 千春 末安 明美 西山 章弘
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.73-82, 2021 (Released:2021-12-24)
参考文献数
12

本研究は、高齢者のライフヒストリー・インタビューで語られる経験をもとに、高齢者の価値観形成過程に着目しながら、高齢者がどのような価値観に基づいて今を生きているのか、看護系大学生(以下、学生)がどのように捉えているのかを明らかにすることである。学生が捉えた高齢者の価値観形成過程としては、【つらい過去を生きる力に転換】【積み重ねた経験による価値観の形成】【悔いのない生き方の模索】【生き方・死に方の再定義】が抽出された。また、高齢者を支える価値観としては、【平和な日常への感謝】【ありのままの心とからだの受容】【自己への信頼】【人とのつながり】【世代を紡ぐ役割】が明らかとなった。高齢者の長い人生の時間軸に沿った価値観形成過程や、“平和”“自己受容” “人間関係”など現在の高齢者を支えている価値観に着目することは、学生の高齢者の見方を変化させるきっかけとなり、高齢者理解をより深化させる機会となる。
著者
千葉 敦子 石田 賢哉 大西 基喜 メリッサ 小笠原 木村 美穂子 宮川 隆美 水木 希 澤谷 悦子 梅庭 牧子 奥村 智子
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-17, 2018 (Released:2022-02-02)
参考文献数
11

保健協力員は市町村長の委嘱を受けて地域住民の健康づくり活動を行う住民組織集団であり、青森県では短命県返上に向けてその活動が期待されている。しかし、保健協力員は担い手不足による固定化や高齢化が課題とされており、活動の活性化に向けた方策が求められている。活動を活性化するためには保健協力員の集団特性を把握し、組織特性に応じた支援の方向性を検討する必要がある。そこで、本研究ではA保健所管内の保健協力員と一般地域住民のヘルスリテラシーおよび主観的健康感を比較し、保健協力員の集団特性に応じた組織支援の示唆を得ることを目的に横断調査を実施した。その結果、ヘルスリテラシーでは「情報を理解し人に伝えることができる」の項目が、保健協力員の方が一般地域住民より有意に高いという結果であった。また、健康状態を示す主観的健康感が、保健協力員の方が一般地域住民より有意に高いという結果であった。