著者
田渕 浩康 河原崎 秀志 桑村 友章 山田 和生 横田 克長 宮島 一人 鈴木 史忠 後藤 正夫 木嶋 利男
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.69-78, 2017-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
31

有機農法,自然農法による畑地の連作栽培の可能性とその特性を明らかにすることを目的に,1996年秋作より,有機物のみの連用によるキャベツの連作栽培試験を実施した.その結果,10年間の平均収量は,化学肥料(化肥)区で22,700kg/haに対して,牛糞堆肥(牛糞)区で22,800kg/ha, 草質堆肥(草質)区で22,400kg/haであった.春作における収量推移は開始当初,化肥区に比べて堆肥区で収量が低く,1年目から3年目の間にいずれの処理区も減収していった.4年目からはいずれの処理区も増加に転じ,連作5,6年目には収量が回復しつつ,それ以降は処理区間の収量差はみられなかった.秋作では,開始から5年間の収量は化肥区で16,200-32,700kg/haに対し,牛糞区で25,100-39,300kg/ha, 草質区で18,100-36,600kg/haと比較的安定し,春作のような1~3年目の減収はみられなかった.6年目以降の収量は全体的に低下していき,堆肥区に比べて化肥区で低いことが多かった.主な発生病害は,春作ではRhizoctonia solaniによる株腐病,秋作ではSclerotinia sclerotiorumによる菌核病であったが,連作7年目に激発した菌核病被害が8年目以降はほんどみられなくなる「発病衰退現象」が観察された.土壌化学性では,有機物の連用により可給態窒素や有効態リン酸含量の増加が確認された.牛糞堆肥の連用ではカリウムの蓄積による塩基バランスのくずれ等に配慮が必要であることが示唆された.