著者
森 昭暢
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.40-50, 2020-07-31 (Released:2020-11-30)
参考文献数
3
著者
藤田 正雄 波夛野 豪
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.53-63, 2017-12-25 (Released:2019-05-21)
参考文献数
16

有機農業への新規および転換参入者を対象とするアンケート調査を2013年9月から12月に実施した.新規および転換参入ともに,参入のきっかけは「安全・安心な農産物を作りたい」が最も多く,販路を自分で開拓し,農業粗収益,実施面積も,参入時に比べ増加していた.しかし,栽培技術の未熟さが,新規,転換参入ともに経営安定の課題であった.また,有機農業の実施面積率では,新規参入者は開始時より100%実施しているという回答が多く,転換参入者は部分実施が多かった.販売先では,参入時において新規が消費者への直接販売,転換は農協・生協が多かったが,現在ではともに流通業者の割合が増加していた.有機農業者を増やすには,栽培技術の確立と地域の条件に応じた普及体制の整備が求められる.
著者
本城 昇
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.19-28, 2017-12-25 (Released:2019-05-21)

学会において2005年に法案検討タスクフォースが設置され,筆者を含むそのメンバー注29)は,「生産者と消費者の分断」,「人間生活と自然の分断」という市場経済の構造的問題を見据えたバランスある総合的な施策の束を打ち出すことができる法律の試案をつくる起草作業に着手した.この「生産者と消費者の分断」,「人間生活と自然の分断」を見据えた総合的な施策の束を打ち出すという考え方は,2001年の「有機農業と緑の消費者運動政策フォーラム」の提言をつくるときに辿り着いたものであるが,筆者は,この考えた方に基づけば,これまでの日本の有機農業やその運動の成果を尊重し,進展させる優れた試案がきっとつくれるであろうと思った.勿論,そのような総合性のある有機農業法制は,外国には存在しない.起草に着手したときは,うまくつくれるか心配であった.しかし,法案検討タスクフォースの構成メンバーで力を合わせ,2005年8月18日,「有機農業の基本法」にふさわしい試案を完成させることができた.そして,この試案が踏まえられて,有機農業推進法が成立した.有機農業関係者の方々からは,歓迎され,大変喜んでいただいた.今もそのときの光景と熱気が忘れられない.上記の考え方に辿り着き,試案を完成することができたのは,外ならぬ,日本の有機農家や有機農業関係者の地道なそれまでの取組の積み重ねと優れた日本の有機農業思想,それと有機農業やその運動に寄り添う研究者の方々の存在があったからこそである.有機農業推進法は,その成果である.今後も,一層充実した有機農業法制が積極的に構想され,その実現により,有機農家が安心して楽しんで有機農業に取り組むことができ,有機農業の持つ魅力が遺憾なく発揮され,地域の自然や社会がいのち輝く持続性のあるものとなっていくことを切に願っている.
著者
船越 建明 西川 芳昭
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.8-10, 2019-07-31 (Released:2019-12-27)
被引用文献数
1
著者
田渕 浩康 河原崎 秀志 桑村 友章 山田 和生 横田 克長 宮島 一人 鈴木 史忠 後藤 正夫 木嶋 利男
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.69-78, 2017-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
31

有機農法,自然農法による畑地の連作栽培の可能性とその特性を明らかにすることを目的に,1996年秋作より,有機物のみの連用によるキャベツの連作栽培試験を実施した.その結果,10年間の平均収量は,化学肥料(化肥)区で22,700kg/haに対して,牛糞堆肥(牛糞)区で22,800kg/ha, 草質堆肥(草質)区で22,400kg/haであった.春作における収量推移は開始当初,化肥区に比べて堆肥区で収量が低く,1年目から3年目の間にいずれの処理区も減収していった.4年目からはいずれの処理区も増加に転じ,連作5,6年目には収量が回復しつつ,それ以降は処理区間の収量差はみられなかった.秋作では,開始から5年間の収量は化肥区で16,200-32,700kg/haに対し,牛糞区で25,100-39,300kg/ha, 草質区で18,100-36,600kg/haと比較的安定し,春作のような1~3年目の減収はみられなかった.6年目以降の収量は全体的に低下していき,堆肥区に比べて化肥区で低いことが多かった.主な発生病害は,春作ではRhizoctonia solaniによる株腐病,秋作ではSclerotinia sclerotiorumによる菌核病であったが,連作7年目に激発した菌核病被害が8年目以降はほんどみられなくなる「発病衰退現象」が観察された.土壌化学性では,有機物の連用により可給態窒素や有効態リン酸含量の増加が確認された.牛糞堆肥の連用ではカリウムの蓄積による塩基バランスのくずれ等に配慮が必要であることが示唆された.
著者
サンガット ビナイ 金子 信博 佐倉 朗夫 鈴木 準一郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF ORGANIC AGRICULTURE SCIENCE
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.71-81, 2020-07-31 (Released:2020-11-30)
参考文献数
30

保全農業の採用に際して雑草は作物と資源を競合するのでその管理は最も大きな問題であるが,雑草の持続可能な管理と利用に関する研究はあまり進んでいない.刈り払いと刈り敷きがダイズの栽培にいかに有効であるかを調べた.不耕起草生栽培は,作物を自然に農地に生える雑草とともに栽培し,雑草を刈り,緑肥として使うという点で保全農業の原則を踏襲している.雑草を3つの異なる頻度で刈り,刈られた草からの窒素放出量を求めた.ダイズの栽培において,雑草を0回(S0),1回(S1),そして2回(S2)刈り取る処理区を設けた.この調査区では1回刈り取りがダイズの収量を確保するのに十分であり,S1とS2はS0の2倍の収量であった.刈り取り回数の増加は,土壌炭素,窒素濃度を増加させており,雑草から土壌への窒素移動を示唆していた.さらに土壌微生物バイオマス量の増加をもたらした.雑草の適切な刈り払いと刈り敷きとしての利用は,低投入の農地で作物の生長を支えるために有効な方法である.
著者
稲垣 栄洋 長谷川 佳菜 窪田 早希子 西川 浩二 成瀬 和子
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.32-37, 2019-07-31 (Released:2019-12-27)
参考文献数
11

伝統的な刈敷き栽培は,ススキやヨシなどのイネ科植物を用いるのが一般的である.しかしながら,徳島県剣山系の伝統農法では一般的な刈敷き栽培にはススキを用いるのに対して,ナス科作物の栽培にはタデ科多年生雑草であるイタドリが経験的に用いられている.この要因は明確ではない.そこで本研究では,イタドリの表層施用がナスの生育や収量,品質に及ぼす影響を検討した.試験は2016年度と2017年度に行い,径30cmのポットにナスを1本植え栽培して,イタドリ施用,ススキ施用,無施用の3水準で行った.その結果,潅水を制限した場合,イタドリを施用した区とススキを施用した区では,無施用に比べて土壌水分が高くなった.また,イタドリ施用区とススキ施用区では昼夜の温度差が小さくなる効果が認められた.ナスの生育や収量には,イタドリやススキの施用の効果は認められなかった.一方,イタドリを施用した区では,ナスの皮がやわらかくなり,果実糖度が高まる効果が認められた.
著者
小松﨑 将一
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.56-64, 2018-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
37

農業の化学化へのアンチテーゼから始まった有機農業運動もその価値が広く認識されるようになり,市場において一定のマーケットを占める位置まで発展してきた.Organic 3.0の議論は,有機農業がメインストリームの農業となるべき新たな技術開発および流通革命を模索している.この中で,日本の有機農業技術の中には不耕起・草生やもみ殻燻炭,ボカシ技術など特筆すべきユニークな取り組みがある.現在多様な有機農業が展開される中で,より環境への負荷の少ない有機農業の実現は一つの大きな課題である.その意味で,自然農法など省資源型の有機農業技術は改めて注目されるが,これらの農法が果たして経済的に実現可能なものか?どう改善すれば経済的に実現可能か?などの課題解決が求められる.その意味で,自然共生型の有機農業技術の新しい展開と再評価が求められるものと考える.
著者
佐藤 忠恭
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.78-86, 2018-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
28
被引用文献数
1

これまで,情愛や無意識がどのようなしくみで農業において作用しているのか,特に暗黙知の観点から詳細に整理した研究はない.ゆえに,近年のICT等を活用した急進的な農業近代化に潜む問題は明確化しておらず,是正策は明らかとなっていない.本稿では,情愛と無意識による感知が農業における技能の構成要素となっていること,及び,情愛が暗黙知の獲得に果たしている役割について論じた.その上で,情報科学の過度な適用が,農業者による対象の客観化の傾向を強めることにつながり,農業者個々人を暗黙知の獲得から遠ざける課題について指摘した.熟練農業者の技能継承を支援するにあたっては,形式知化に偏らず,暗黙知の獲得による継承と,それを支える徒弟制度,習俗,思想,文化,それらを維持する村落共同体をも視野にいれた,総合的なアプローチが必要である.
著者
大山 利男
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.6-14, 2017-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
17

国際的にみたとき,とくにヨーロッパ諸国では,有機畜産の発展画期にはつぎのような時代背景を認めることができる.1960~1970年代:アニマルウェルフェアの関心の高まり,1980~1990年代:環境問題への社会的関心の高まりと農業環境政策の展開,それと親和性の高い有機農業の普及拡大,粗放化プログラムと親和性のある有機畜産の拡大,1990~2000年代:BSE危機の大きなインパクト,有機畜産物への需要急増,2000~2010年代:アニマルウェルフェア法制の国際化,飼料生産の地域指向の高まり(反GM, ローカル志向の強まり)もちろん各国により社会背景や経済状況が異なれば,同じように有機畜産が普及拡大する訳ではない.しかし表3に見るように,有機畜産の普及展開状況に大きな彼我の差があることは明らかである.本稿のタイトルは,「有機畜産に問われる課題と論点」であるが,つきつめれば日本の「慣行畜産に問われる課題と論点」でもある.毎年,データを更新して刊行されている『世界の有機農業:統計とトレンド』(Willer and Lernoud 2017)でも明らかであるが,世界の有機農業を全体としてみれば,多かれ少なかれ有機農業の半分は耕種部門であり,あとの半分は畜産部門である.南北アメリカやオセアニアの新大陸国家は別としても,またアジア地域は極端に少ないが,ヨーロッパ諸国の有機農業の土地利用割合を一つのモデルとみれば,有機農地の半分が永年草地,永年性作物で占められている.言うまでもなく永年草地は畜産的利用に供されている土地である.豚,鶏(中小家畜)はともかく,肉牛,乳牛(大家畜)などの反芻動物(草食家畜)が有機畜産には大きな位置を占めており,有機畜産の土地利用管理は国土利用に貢献しているのである(Willer and Lernoud 2017: 78-85).こういった畜産を前提とする時,有機畜産は粗放的で低投入の飼養管理が基本であることがわかる.したがって,有機畜産物の生産費も必ずしも高い訳ではない.少なくともヨーロッパ諸国の有機畜産(慣行畜産もそれほど違わないようだが)は,土地生産性を低下させるが,労働生産性,資本生産性をむしろ高める傾向にあるという報告が少なくない(Rahmann and Godinho 2012).それらを丁寧に検証することは今後の課題としたいが,このような有機畜産の生産技術,経営管理の特徴と趨勢をみると,日本の畜産はかなり大胆な見直しが迫られるかもしれない.有機畜産に問われる課題は,そのまま慣行畜産に問われる課題でもあると考えるからである.
著者
中西 良孝 岩成 文子 髙山 耕二 伊村 嘉美
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-31, 2019

<p>クマザサ抽出残渣(以下,ERDB)の畜産的有効活用を図ることを目的として2つの試験を行い,試験1では,ERDB原物の化学成分,栄養価および反芻家畜による嗜好性を明らかにするとともに,保存性を高めるために米ヌカ類を添加してサイレージ調製した場合の発酵品質,栄養価および嗜好性についても検討した.サイレージ調製については,ERDBのみのERDBサイレージ(以下,ERDBS)区,米ヌカまたは白ヌカを10%添加した米ヌカ区および白ヌカ区の計3区を設定した.試験2では,ヤギに市販ルーサンヘイキューブ(HC)のみを給与した区を対照区とし,HCとERDBS, 米ヌカ添加ERDBSまたは白ヌカ添加ERDBSをそれぞれ乾物重比で8:2に混合したERDBS・HC区,米ヌカ添加ERDBS(以下,米ヌカ・HC)区および白ヌカ添加ERDBS(以下,白ヌカ・HC)区の3区を試験区として計4処理区を設定した.</p><p>試験1の結果から,ERDBの粗タンパク質(以下,CP)含量は10.4%,粗脂肪(以下,EE)含量は7.4%と稲ワラのそれらの2倍以上であり,粗繊維含量も45.7%と高く,両飼料間で化学成分に大きな違いが認められたものの,ERDBの可消化養分総量(以下,TDN)は45.5%と稲ワラのそれとほぼ同等であった.しかし,ヤギおよびウシによる嗜好性は稲ワラや輸入乾草に比べてERDBで劣ることが明らかとなった.また,サイレージのフリーク評点はERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に高く(P<0.05),いずれの区も62点以上と品質は「良」であった.さらに,ヤギおよびウシによるサイレージの嗜好性はERDB区およびERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に優れた(P<0.05).試験2の結果から,ヤギの代謝体重当たりの乾物,CPおよびTDN摂取量,1日の個体維持行動型割合および粗飼料価指数に有意な区間差は認められなかった.血液性状については,血中総ビリルビン濃度以外,有意な区間差が認められず,すべての項目はほぼ標準範囲内であった.</p><p>以上より,ERDBを原物のまま密封保存してもサイレージ化は可能であるが,米ヌカ類を添加することで発酵品質,栄養価および嗜好性がさらに向上することが示された.ただし,米ヌカ類添加ERDBS中のEE含量が7%以上と高かったことから,他の飼料と混合給与する必要があるものと考えられた.また,ヤギにHCの20%(乾物重比)をERDBSまたは米ヌカ類添加ERDBSで代替給与しても,飼料利用性や健康状態がHC単体給与の場合と比べて遜色なかったことから,それらのサイレージは反芻家畜の飼料として利用可能なことが示された.</p>