著者
笠原 茂樹 斉藤 章弘 清水 英樹 山田 有希恵 芝野 耕司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.375-376, 1993-03-01

最もポピュラーなコンピュータミュージックといえば、シーケンサであろう。しかし、シーケンサーは、音楽を組み立てて、それを再生させるという機能をもつにすぎない。すなわち、シーケンサは、一種のデジタルレコーダである。実際に、ある曲を入力し、演奏させた場合、その曲を聞くものの立場から見ると、レコードやCDを聞くことと変わりはない。また、シンセサイザには、多くの場合、マイクロプロセッサが組み込まれているが、従来の楽器を根本的に変えるものではない。一つの楽曲の演奏ができるまでを考えると、練習によって、まずその楽曲を憶え、演奏技術とその適用方法を研く、三つの要素に分解することができる。コンピュータは、この三つの要素のそれぞれに対して、新しい可能性を研き、人の表現力を大きく高める新しい「楽器」としての可能性を秘めている。この可能性を上記の演奏ができるまでの過程と、次のように対応させることができる。すなわち、楽曲を覚えることは楽曲をデータとして入力することに対応し、演奏技術の適用はこのデータの加工に対応する。この過程をコンピュータ化することによって、事前に格納したデータにさまざまな加工を行うことによる新しい形態での演奏が可能になるのではないか。そして、この「楽器」を用いれば、オーケストラを実際に指揮し、フルバンドジャズを実際に演奏することすら可能であろう。こうした視点に立って、この研究では、ジャズとハウスミュージックでの即興演奏を分析し、これらの音楽分野で用いられているアドリブの手法を一種のフィルタとして、実現すること及びその制御をリアルタイムに行うことによる演奏の可能性を検討するために、MIDlインプロバイザーを試作した。