著者
湯浅 龍彦 根本 英明 木村 暁夫 吉野 英 山田 滋雄 西宮 仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.601-605, 2001-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16

慢性硬膜下血腫除去術の直後に発症したCreutzfeldt-Jakob病(CJD)を経験した. これはきわめて特殊な経過であり, 術前にはもちろん, 術後においてもCJDの診断を下すことは困難であった. そのなかで, 進行性に悪化する臨床症状に加えて拡張強調MRIがCJDの診断の糸口になった. つまり, 脳波に未だ周期性同期性放電(PSD)の出現していない発病初期の脳MRIにおいて, T1強調画像やT2強調画像にほとんど変化がみられないのに対し, 拡張強調MR画像に明瞭な病変がみられたことは特異なことであった.また, 本例においてはCJDの初期の臨床症状は明らかな左右差をもって発症しており, かつ, 同時期の脳MRIの病変分布にもまた著しい左右差が見られた. これは先行した慢性硬膜下血腫がCJDの脳病変の発現経過に影響を与えたものと推論され興味深いことであった.さらに本例は, CJD患者が外科手術を受ける事態が現実に起こりうることを示すものであり, CJDの診療に当る施設においては, 感染防御対策の面からだけでなく, 手術を受け入れるために必要な整備と具体的な手順書を早急に整えるべきであろう.