- 著者
-
山田 真広
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2013, 2013
コンビニ・スーパー・通信販売といった様々な小売業態の登場に伴う消費者購買行動の多様化,規制緩和やモータリゼーションの進展などに伴う大型店の売場面積拡大と郊外化の進展などにより,地方都市における中心商業地の求心力低下が問題となっている.その結果,日用食料品の入手に困難をきたす「買物難民」層の出現や,都市の個性がない画一的な景観の出現といった問題が発生している.本研究は,人口10万規模の地方都市である静岡県三島市を事例に,地方都市内部における消費者購買行動を時系列で分析し,その変化の要因を明らかにすることを目的とした.その研究手法として,三島市の中心市街地・市街地縁辺部・郊外部に居住する高齢者を対象に,食料品(鮮魚)と買い回り品(革靴)についての購買行動を,40年前・20年前・現在の3時期別に尋ねることにより把握した.アンケートの内容は,普段利用している(いた)店舗とその利用理由や,店舗までの交通手段などについてとした.得られた結果からは地域別・商品別に,購買先・購買距離・交通手段の変化などを把握した.購買距離についてはGISにより,道路距離解析を用いて算出した.さらに,利用店舗の場所を目的変数,居住地・交通手段・店舗の利用理由などを説明変数として数量化2類による分析を行い,各時期別・商品別にみた,店舗の選好理由を導き出した.研究で分かった事実を要約すると,食料品(鮮魚)については,①購買距離は中心市街地・市街地縁辺部・郊外部の3地区とも時代とともに増大し,中心市街地に比べて郊外部の方が3.6~6.8倍増大している.②買物先を規定する要因には,居住地域や交通手段(徒歩・公共交通機関・自家用車)が大きくかかわっていることから,店舗への近接性が重視されている.それに加えて中心市街地の店舗の利用者は,サービスの質や顔なじみかどうかなどが重視されている ことなどが明らかになった.買い回り品(革靴)については,①購買距離の地域的差異は日用品ほどは認められず,消費者の多くが40歳代~60歳代であった時期(20年前)の購買距離が最も長かったことから,居住地や購買距離よりも消費者の年齢や職業といった個人属性が購買先を規定していると考えられる.②三島市内の店舗か市外の店舗(沼津市・静岡市・東京都など)を選択する要因は,以前は利用する交通手段や品質・サービスの良さが,現在は価格や顔なじみかどうかが大きく関わっていると考えられる.さらに,三島市内の中でも中心市街地の店舗を選択する場合も,同様の要因が関わっている ことなどが明らかになった.