著者
水野 猛 山篠 貴史
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.174-181, 2017-02-20 (Released:2018-02-20)
参考文献数
28

移動することができない植物にとって季節による日長や気温の変化に適切に対応することは植域を広げながら繁栄するのに必要な性質と考えられる.この点で植物の概日時計が重要な役割を担っていると考えられる.シロイヌナズナの研究から植物の概日時計の実体が明らかにされつつある.これらの知識を基盤にして,筆者らは次のような具体的疑問に答えようと試みている.日長や気温の季節による変化(シグナル)は概日リズムを生む中心振動体の「どの因子」に「どのような機構で」入力されているのだろうか.本稿ではこの問題に焦点を絞り最近の筆者らの成果を解説する.
著者
中西 華代 堀 菜七子 山篠 貴史 水野 猛
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.425, 2011

避陰反応は植物の光応答系において最も特徴的な現象の一つであり、近接する植物の陰に入った植物は著しく背丈が徒長する。こうした避陰反応は遠赤色光が重要な光シグナルとなりフィトクロム(主にphyB)を介した光情報伝達系により制御されていることが明らかになっている。我々はミヤコグサの光シグナル伝達系の解析をする過程でミヤコグサに特に顕著な避陰反応を見いだしたので報告する。避陰反応には背丈の徒長に加え、早咲き、腋芽からの分岐の抑制などがある。シロイヌナズナでは腋芽からの分岐抑制現象はあまり顕著ではなくほとんど解析されていない。我々はミヤコグサを遠赤色光に富んだ光条件下で生育させ避陰反応を誘導すると腋芽からの分岐が極端に阻害され、白色光条件下で生育させた植物体と全く異なる形態を示すことを見いだした。このことはミヤコグサが「光シグナルによる避陰反応の誘導」と「ストリゴラクトンによる分岐制御」とのリンクを解析する上で格好の材料であることを示している。以上のような背景をもとに、今回は次の点を中心に報告する。(i)ミヤコグサにおける避陰反応としての腋芽分岐制御の詳細な現象の記述。(ii)トウモロコシの分岐制御因子<I>teosinte branched 1</I> (<I>tb1</I>)のミヤコグサオルソログの機能解析。(iii)シロイヌナズナで研究の進んでいる分岐制御MAX経路に相当するミヤコグサ遺伝子群の同定と解析。