著者
安田 武 山階 克子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.278-287, 1968-07-15 (Released:2010-09-30)

消費財の耐用年数については, 主として営業用の減価償却の都合上, 国税局によって規定されたものがある.また, 銀行や火災保険会社などでその業務の都合上調査した資料があるが, これらに繊維製品は数点しか含まれておらず, それ以外に公表されたものはほとんど見当らない.特に戦後の消費ムードによって国民の消費財の耐用に関する考え方が変化しつつあるので, 最近の繊維製品の耐用年数についてその実態を明らかにすることは非常に重要であると思われる.著者らは, 本学学生およびその家族を対象に, 調査人員623名について, 家庭で実用する131品種の繊維製品の平均耐用年数, 実際に使用する日数, 使わなくなる理由を調査した.繊維製品の耐用年数は, 短かいものでストッキングの2~3週間から長いものでは蚊帳の12.6年に到るまで, はなはだ広範囲にわたっている.消費ムードによって全体的にこれらの耐用年数が短かくなる傾向はあるとしても, このような品種別の大きい開きは無視できないと考えられる.消費科学の研究課題として, 強さ, 変色など種々の特性がとりあげられているが, 耐用年数に着目して繊維製品の消費特性を考えてみると, 品種によって強さの要求されるもの, あるいは変色しないことを要求されるものなど非常に特徴的な傾向がみられる.さらに, 科学的特性がいかにそなわっていても, 型の陳腐化によって耐用年数の決定される品種もはなはだ多い.