著者
山﨑 久義 伊佐 和美 小笠原 健一 渡邉 聖司 迫田 岩根 入田 和男 清川 博之
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.601-605, 2016
被引用文献数
1

<p>ABO血液型亜型で日本人に最も多く認められるB<sub>m</sub>型とAB<sub>m</sub>型は,<i>B</i>遺伝子イントロン1の部分欠失により生じることが報告された.この欠失は5.8kbにおよび,GATA結合部位を有する転写エンハンサー領域が含まれる.一方,GATA>GAGAの点変異で生じたと考えられるB<sub>m</sub>型も1例報告されているが,この変異と唾液中の型物質との関係は不明である.</p><p>今回,合計49例のB<sub>m</sub>型とAB<sub>m</sub>型を解析した結果,5.8kbの欠失がない1例を認めた.エンハンサー領域を調べた結果,2つのGATAモチーフのうち3'側のGATAモチーフにGATA>GAGA変異が認められた.発端者は,オモテ検査O型,ウラ検査B型で,抗B試薬による吸着解離試験でB抗原が確認された.血漿中のB型糖転移酵素活性はほぼ対照のB型と同程度で,唾液中にはB型とH型物質が認められ,Lewis血液型はLe(a-b+)であった.以上の結果よりエンハンサー領域にGATA>GAGA変異を生じた本邦初の分泌型B<sub>m</sub>と判定した.この変異は,赤血球B抗原の発現を低下させるが,唾液中のB型物質には影響しないことが確認された.</p>