著者
山﨑 智文 永井 義夫 堀口 恭平 鹿嶋 直康 倉﨑 康太郎 丹羽 一貴 浜野 久美子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.458-463, 2022-08-30 (Released:2022-08-29)
参考文献数
20

1型糖尿病診断マーカーとしてのグルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamic Acid Decarboxylase:GAD)抗体は,数か月という短期間で陰性化することは稀である.我々はCOVID-19罹患とGAD抗体の消長が関連したと考えられる症例を経験した.43歳,男性.COVID-19に罹患した際GAD抗体陽性と判明し,インスリン治療を開始したが,7か月後GAD抗体は陰性化した.HLAの遺伝子型は,DRB1*09:01-DQB1*03:03であり,日本人1型糖尿病発症の疾患感受性ハプロタイプを有していた.COVID-19に罹患した糖尿病では,後にGAD抗体が陰性化することがあり糖尿病の病型診断には慎重であるべきと思われた.新型コロナウイルス感染と糖尿病の関連性を考えるうえで,同様の症例があった場合はインスリン分泌能とGAD抗体価をフォローしHLAハプロタイプまで確認しておくことが望ましい.