著者
中川 朋子 永井 義夫 河津 梢 清水 紗智 福田 尚志 石井 聡 田中 逸
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.520-526, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
20

57歳男性,タクシー運転手.血糖コントロール不十分なため教育入院となる.入院時BMI 33 kg/m2.HbA1c 9.1 %,尿ケトン-,GAD抗体-.22 kcal/標準体重の食事療法および入院前から服用していたカナグリフロジンを継続し退院した.翌日より職場の呼気アルコール検知器で陽性反応が持続するため受診した.血糖113 mg/dL,尿糖4+,尿ケトン2+,血中総ケトン体2350 μmol/L,血中アルコールは感度未満であった.アシドーシスなく,正常血糖ケトーシスと診断した.カナグリフロジン中止したところ,3日後に検知器は陰性となり,その後外来で尿ケトン陰性を確認した.簡易アルコール検知器はケトン体により偽陽性となり得る.SGLT2阻害薬服用者のアルコール検知器反応陽性は,ケトーシスの早期発見のきっかけになる一方,乗務者には酒気帯び誤認トラブルになる可能性があり注意を要す.
著者
山﨑 智文 永井 義夫 堀口 恭平 鹿嶋 直康 倉﨑 康太郎 丹羽 一貴 浜野 久美子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.458-463, 2022-08-30 (Released:2022-08-29)
参考文献数
20

1型糖尿病診断マーカーとしてのグルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamic Acid Decarboxylase:GAD)抗体は,数か月という短期間で陰性化することは稀である.我々はCOVID-19罹患とGAD抗体の消長が関連したと考えられる症例を経験した.43歳,男性.COVID-19に罹患した際GAD抗体陽性と判明し,インスリン治療を開始したが,7か月後GAD抗体は陰性化した.HLAの遺伝子型は,DRB1*09:01-DQB1*03:03であり,日本人1型糖尿病発症の疾患感受性ハプロタイプを有していた.COVID-19に罹患した糖尿病では,後にGAD抗体が陰性化することがあり糖尿病の病型診断には慎重であるべきと思われた.新型コロナウイルス感染と糖尿病の関連性を考えるうえで,同様の症例があった場合はインスリン分泌能とGAD抗体価をフォローしHLAハプロタイプまで確認しておくことが望ましい.