著者
岡島 奈音
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-38, 2019-01-31

幕末・明治期の絵師・河鍋暁斎は「地獄太夫図」を得意とし、作例も多い。中でも図像の類似が著しいウェストン・コレクション「一休禅師地獄太夫図」、ゴールドマン・コレクション「地獄太夫と一休」、クリーブランド美術館所蔵「屏風の前の美人」、河鍋暁斎記念美術館所蔵「極楽太夫図」、ボストン美術館所蔵「地獄太夫図」の計5 点に着目し、それぞれに描かれた地獄太夫の打掛文様を比較検討した。その結果、典拠である山東京伝の読本『本朝酔菩提全伝』で地獄模様とされた打掛を、暁斎が七福神と宝尽くしによる見立て地獄模様に変えた点は共通するが、各作品には明確な差異が見出された。具体的には、ウェストン本の打掛文様は最も緻密で、隅々にまで洒落が効いており、暁斎の手によるものと考えられる。ゴールドマン本の図柄はウェストン本とほぼ同一ながら、やや手数が少ない。クリーブランド本と暁斎美術館本は七福神の筆致が前2 作とは異なる上、図像に不完全な部分があり、模写の際に写し崩れが生じたと考えられる。ボストン本は、ウェストン本で展開された見立てが複数個所で成立しておらず、絵師が暁斎の意図を理解しきれずに写し崩れが著しくなったと推測される。
著者
岡島 奈音
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.17, pp.43-53, 2012-03

町人が経済力を獲得した江戸時代以降、日本女性の最も一般的な衣服であった小袖には、様々な趣向を凝らした意匠が登場した。本研究では、円山派絵師の筆によるという伝来を持つ三井家伝来きもの型原寸下絵29件の内の1件「八緩文様下絵」から推定される小袖の姿をCGで再現するとともに、同下絵に関する従来の言説を再検討するため、絵画作品である八橋図、工芸作品である八橋文様、各々の展開との比較を行った。考察の結果、以下のような見解を得た。1)「八橋文様下絵」から推定される小袖は、鶴の丸文様の紅色論子。様板は鹿の子絞り、杜若の花は自または水色、茎は明るい緑、葉は一段濃い緑の色糸、橋桁の輪郭は金糸で刺繍され、全体には金砂子が施されていたと考えられる。2)従来「八橋文様下絵」の制作にあたったと考えられてきた円山・四条派には、八橋図の作例を見つけることが出来なかった。小袖意匠としての八橋文様は類例も多くみられ、オーソドックスな小袖意匠として広く用いられたと考えられる。更に、橋を分断する八橋図の作例は決して多くないが、八橋文様には分断された橋の意匠の類例が散見している。以上の見解から、「八橋文様下絵」を、円山派絵師が小袖意匠に絵画性を持ち込んだ作例というよりも、先行する小袖意匠を参考に制作されたものと結論付けた。