著者
古賀 令子 北方 晴子 田中 里尚 濱田 勝宏
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-77, 2011-03

ファッションとメディアは切っても切れない関係にある。しかし、近年の大きな社会変化の影響が、ファッションの環境や構造を大きく変貌させ、メディアも「紙媒体」依存からの脱皮を余儀なくさせつつある。ファッションとメディアとの関係も、従来モデルから大きく変化しつつある。本研究では、そうしたファッション環境変化の現状とその変化に適応しようとしているファッション・メディアの課題とを把握するために、研究者とファッション・メディア編集の実務者双方の観点から問題を提出し、それらを総合してファッションとメディアとの関係付置を整理して、メディアの現場が抱える問題と、メディア研究が今後目指していく課題とを明確化しようという試みである。基礎的研究と、共通認識を形作るための議論の場の<シンポジウムファッションとメディアを考える〉(2009) の過程で、浮かび上がったいくつかの課題を、中国ファッション誌の現在の状況をケーススタディとして検証した。外部からの先進情報の導入と読者の啓蒙、内なる丈化の醸成と発信というメディアの機能が再確認でき、インターネット情報が氾濫する時代において「紙媒体としてのファッション誌」の意味を再考する必要性が浮上した。
著者
安永 明智 野口 京子
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.129-137, 2012-03-31

本研究は、日本人男女1242名を対象に、ファッションへの関心及び着装、購買行動の性別、年代、主観的な経済状況、性格による差を検討することを目的とした。平成22年7月に、ファッション意識と生活満足度に関するインターネット調査を実施した。回収サンプルは、男性618名(平均48.8±14.4歳)、女性624名(平均47.6±14.2歳)であった。調査内容は、基本的属性(満年齢、性別、主観的な経済状況、性格)、服装への関心(自分及び他人のファッションへの関心)、外出着の着装基準(個人的嗜好、流行、社会的規範、機能性)、1ヶ月の衣服の購入金額について尋ねた。分析の結果、(1)女性は、男性と比較して、自分や他人のファッションへの関心が高く、外出着の着装基準において、個人的嗜好、流行、社会的規範、機能性を重視し、1ヶ月の衣服の購入金額が多い、(2)男女ともに、20歳代の若者世代が中高齢世代と比較して、ファッションへの関心が高く、外出着の着装基準として個人的嗜好や流行を重視する、女性では、中高齢世代が若者世代よりも機能性を重視する、(3)男女ともに、主観的な経済状況を良いと評価した者、外交的な性格の者は、そうでない者と比較して、自分のファッションへの関心が高く、外出着の着装基準として、個人的嗜好や流行、社会的規範を重視し、1ヶ月の衣服の購入金額が多いことが示された。
著者
佐藤 真理子 熊谷 伸子 小出 治都子
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.11-20, 2016-03

袴は、腹部と胸l部を覆い紐で腰に結びつける形の和服の一種で、日本書紀にも記載のある本邦の伝統的民族衣装である。本研究では、袴の再評価と新たな展開を目指し、市場の現状調査、マンガ分析、機能性検討を行った。市場調査の結果、現代の袴に包含される衣服は多岐にわたり、その着用目的も異なるため、分類・定義確認と、各々の流通構造の明確化を要する現状が示された。マンガ分析においては、袴着装キャラクターの登場するマンガは一定数刊行されており、主なキャラクターは「武士・侍」と「学生」であった。現代の若者の袴着装シーンでは、日本の伝統文化の再認識につながる表現がなされていた。機能性検討の結果、温熱的快適性・姿勢保持性・下肢の自由度において、袴は高い機能性を持つことが明らかとなった。和装の主流たる着物(長着)が、その着装法から、ハレの場のみの限定的な衣服、日常生活から乖離した存在となっている現在、袴は、日常着にもなり得る機能性と快適性を備え、伝統文化の継承者、クールジャパンのアイコン、新しい和のモードとしての可能性を有することが示された。
著者
古賀 令子 北方 晴子 田中 里尚 濱田 勝宏
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-77, 2011-03

ファッションとメディアは切っても切れない関係にある。しかし、近年の大きな社会変化の影響が、ファッションの環境や構造を大きく変貌させ、メディアも「紙媒体」依存からの脱皮を余儀なくさせつつある。ファッションとメディアとの関係も、従来モデルから大きく変化しつつある。本研究では、そうしたファッション環境変化の現状とその変化に適応しようとしているファッション・メディアの課題とを把握するために、研究者とファッション・メディア編集の実務者双方の観点から問題を提出し、それらを総合してファッションとメディアとの関係付置を整理して、メディアの現場が抱える問題と、メディア研究が今後目指していく課題とを明確化しようという試みである。基礎的研究と、共通認識を形作るための議論の場の<シンポジウムファッションとメディアを考える〉(2009) の過程で、浮かび上がったいくつかの課題を、中国ファッション誌の現在の状況をケーススタディとして検証した。外部からの先進情報の導入と読者の啓蒙、内なる丈化の醸成と発信というメディアの機能が再確認でき、インターネット情報が氾濫する時代において「紙媒体としてのファッション誌」の意味を再考する必要性が浮上した。
著者
平松 隆円
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.15, pp.33-42, 2010-03

This research was conducted using a questionnaire survey involving 628 male and female university students with the following two objectives: 1)Identify the relationship between the perception of social rights and wrongs as a standard for "makeup behavior" in public,and to what degree people actually engage in "makeup behavior" in public. 2)Investigate the relationship of how differences in self-consciousness and other-consciousness plays a role in "makeup behavior" in public,and their perception of it in relation to social rights and wrongs. Summarizing the results, "makeup behavior" in public and perception of social rights and wrongs were affected by the presence of strangers or non-strangers. Both the men and women who perceived that "makeup behavior" in relatively public places in the presence of strangers was socially acceptable were also prone to engage in makeup application,regardless of the presence of strangers or non-strangers. " Makeup behavior" in public and the perception of social rights and wrongs were influenced by public self-consciousness in men,and external another person-consciousness in women.
著者
小野 幸一 孫 珠煕 宮武 恵子
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.57-66, 2010-03

ファッションを学んでいる女子学生を対象に意識・行動に関してアンケート調査を行い分析した結果、名古屋、京阪神、九州の3地域には地域性があることが明らかとなった。1)一か月のこづかいは、名古屋、京阪神では約4万円であるが、九州では約2万5千円である。被服費として名古屋、大阪で約半額の2万円、九州では約1万円支出している。2)定期購読ファッション雑誌では、名古屋はギャル系ファッション志向が強い。京阪神、九州は元祖赤文字系、ストリート、モード系の各志向の雑誌が読まれている。九州での1位はヤングベーシック系non-noである。名古屋、九州での憧れの女性有名人第1位はギャル系の象徴である浜崎あゆみであるが、九州ではTOPlOには入っていない。3)好きなへアースタイルでは名古屋がボリュームのあるゴージャスなスタイルの割合が高い
著者
北方 晴子
出版者
ファッションビジネス学会
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.183-192, 2006-03

イタリア未来派は1909年にマリネッティMarinetti,T.E(1876~1944)を指導者として始まった芸術運動である。過去の遺産や伝統的な価値と対立し、新時代に相応しい生活と様式を創造しようと衣装についても強い関心を抱き、特にメンズファッションを巡っては革新的な改革を提唱した。メンズファッション改革を中心的に進めたバッラBalla,G(1871-1958)は1914年5月にLe vetementmasculine futuriste manifeste(未来派男性衣装宣言)を発表し、同年9月にII vestito antineutrale manifesto futurista(未来派反中立衣装宣言)を発表した。タイアートThayaht,E.(1893-1959)は1932年のManifesuto per la transformazione dell'abbigliamento-maschile(男性衣装変革宣言〉を発表し、1933年未来派グループによりII manifesuto futurista del cappelo italiano(イタリア帽子未来派宣言)、Manifesto futurista sulla cravatta italiana(イタリアネクタイ未来派宣言)が発表された。当初としては非常に新しい美意識を持っており、その独特な発想は今日でも高い関心が持たれている。他方、1914年7月第1次世界大戦が勃発し、次第にファシズムへと導かれ参戦へと向かう。未来派は活動の中心を芸術から政治へと移行し、ファシズムに傾斜していった。この時期にタイアートら未来派の活動は活発化していく。男性至上主義的な考え方を推進するファシズムこそ男らしさを強調する文化であり、そうしたファシズム美学を支えたひとつにイタリア未来派があった。すなわち、彼らが取り組んだ試みは男らしさを強く主張する表象であった
著者
岡島 奈音
雑誌
ファッションビジネス学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.17, pp.43-53, 2012-03

町人が経済力を獲得した江戸時代以降、日本女性の最も一般的な衣服であった小袖には、様々な趣向を凝らした意匠が登場した。本研究では、円山派絵師の筆によるという伝来を持つ三井家伝来きもの型原寸下絵29件の内の1件「八緩文様下絵」から推定される小袖の姿をCGで再現するとともに、同下絵に関する従来の言説を再検討するため、絵画作品である八橋図、工芸作品である八橋文様、各々の展開との比較を行った。考察の結果、以下のような見解を得た。1)「八橋文様下絵」から推定される小袖は、鶴の丸文様の紅色論子。様板は鹿の子絞り、杜若の花は自または水色、茎は明るい緑、葉は一段濃い緑の色糸、橋桁の輪郭は金糸で刺繍され、全体には金砂子が施されていたと考えられる。2)従来「八橋文様下絵」の制作にあたったと考えられてきた円山・四条派には、八橋図の作例を見つけることが出来なかった。小袖意匠としての八橋文様は類例も多くみられ、オーソドックスな小袖意匠として広く用いられたと考えられる。更に、橋を分断する八橋図の作例は決して多くないが、八橋文様には分断された橋の意匠の類例が散見している。以上の見解から、「八橋文様下絵」を、円山派絵師が小袖意匠に絵画性を持ち込んだ作例というよりも、先行する小袖意匠を参考に制作されたものと結論付けた。