- 著者
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岡嶋 雅史
常富 宏哉
内藤 光祐
- 出版者
- 東海北陸理学療法学術大会
- 雑誌
- 東海北陸理学療法学術大会誌
- 巻号頁・発行日
- vol.28, 2012
<b>【目的】 </b>サンディング動作は主に上肢の筋力強化や関節可動域改善を目的に使用されているが、動作時の肩関節周囲筋の筋活動についての報告は少ない。そこで今回は肩の屈曲角度を規定してサンディング動作を行い、角度の違いが肩関節周囲筋に及ぼす影響を筋電図学的に分析することを目的とした。<br><b>【方法】 </b>対象は健常男性8名(平均年齢28.6±5.3歳)、測定筋は右の三角筋前部(AD)、上腕二頭筋長頭(BL)、上腕三頭筋長頭(TL)、棘下筋(IS)、前鋸筋(SA)の5筋とし、Noraxon社製筋電計TelemyoG2を用い、表面筋電図をサンプリング周波数1500Hzで記録した。測定肢位は椅子座位とし、テーブル高を上肢下垂位、肘屈曲90度での肘下端の高さとした。測定はテーブル傾斜角度0度、30度、肩屈曲角度60度、90度、120度の6条件とし、床にワイヤーで固定したハンドルを最大努力で、サンディング動作を行うように前方に進めるよう指示し、5秒間の等尺性収縮を行った。得られたデータは全波整流したのち中間3秒間の平均振幅を求め、MMTの肢位での最大等尺性収縮時の筋活動で正規化(%MVC)し、全対象者の平均値を平均%MVCとした。また、ハンドルとワイヤー間に同社製フォースセンサーEM-554を設置し、筋電図に同期して最大張力を測定した。統計学的処理はSPSS-Statistics18を用い、反復測定による一元配置分散分析及びTukeyの多重比較を行い、有意水準を5%未満とした。尚、対象者全員に本研究の目的と方法を説明し、同意を得た。<br><b>【結果】 </b>各測定筋の平均%MVCは、テーブル傾斜0度では肩屈曲角度間に有意差はなかった。テーブル傾斜30度ではSAを除いた4筋において肩屈曲60度と120度間に有意差を認めた(肩屈曲60度→120度の順に、AD:94.9→40.9%、BL:50.1→27.2%、TL:24.3→50.9%、IS:32.4→66.4%)。テーブル傾斜0度、30度ともに肩屈曲60度ではAD、SAの順に、肩屈曲120度ではSA、ISの順に平均%MVCが高く、いずれも50%以上を示した。また、肩屈曲角度の増加に伴い平均%MVCが減少する筋群(AD、BL)と、増加する筋群(SA、IS、TL)に分かれ、テーブル傾斜30度の方がその傾向が強かった。平均最大張力はテーブル傾斜0度における肩屈曲60度と90度間のみ有意差を生じ、その他の条件間では差はなかった。<br><b>【考察】 </b>サンディング動作は、肩屈曲60度では主にADによる肩屈曲とSAによる肩甲骨外転が、肩屈曲120度ではSAによる肩甲骨外転とTLによる肘伸展作用がハンドルを前方に推進する力源となっている事が考えられる。平均最大張力は肩屈曲60度と120度間に有意差はないため、肩屈曲120度ではADとBLの筋活動減少を代替してSA、TLの筋活動が増加し、加えてISによる関節窩への上腕骨頭引きつけ作用が増加し、肩屈曲をサポートしていることが推察された。また、テーブル傾斜角度を上げ抗重力位に近づける程、肩の屈曲角度間における筋活動の変化が大きくなることが示唆された。<br><b>【まとめ】 </b>サンディング動作は、肩屈曲60度ではAD、SAが、120度ではSA、IS、TLの筋活動が高く、肩の屈曲角度により力源となる筋が変化することが推察された。また、抗重力位で行う程その筋活動変化が大きくなることが示唆された。