- 著者
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岡村 精二
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.97-104, 1995-11
【提言の背景、目的】 阪神・淡路大震災直後、体育館などの避難所で暖房はもちろん、プライバシーすらない生活を余儀なくされた被災者は約30万人もいた。しかし、緊急に必要とされた仮設住宅5万戸に対して、震災後1か月で完成した仮設住宅は、わずか1250戸だった。敷地の確保のむずかしさなどもあり、現在も当初の予定戸数を確保できていない。阪神大地震と同規模の災害が再び起こったとき、今回と同じように何十万人もの被災者が何か月も体育館での避難生活を余儀なくされるのだろうか。もっと簡単に短時間に建設できる仮設住宅を開発し、運搬、建設(設置)ができるシステムを構築する必要があるのではないだろうか。 【神戸で建設された仮設住宅の大きな問題点】 ・多くの部材と専門家しかも労力を必要とし、1棟建設するために20日間も掛かる。・1戸あたり大工手間が10人掛かっており、解体再利用は不可能に近い。(解体処分となれば、350万円×5万戸=1750億円の税金が無駄になる)・設備、内装が公団住宅と同等仕様のため、仮設住宅の撤去時期が来ても退去に応じる人が少なく、社会問題となる可能性がある。 【緊急仮設住宅(仮称:防災ハウス)の開発、設計コンセプト】 ・1戸当たりの建設(設)を素人でも30分で行うことができる構造。・災害発生から、1週間以内に5万戸の建設(設置)ができるシステムの構築。・設置場所を選ばない。(斜面や瓦礫の上にも建設でき、基礎を必要としない)・輸送、設置時の天候に左右されない。(現状の現地組み立て方式は不可)・構造が簡単で安価であり、再利用でき、保管、点検が容易である。以上を大きなコンセプトに防災ハウスの開発を行った。広さは床面積10m^2以内とした。私が単独太平洋横断に使用したヨットの構造を考慮すれば、浴室、トイレ、台所、4人掛けテーブル、独立した寝室(4ベット)を配置でき、4人家族が十分に生活できる。平均的家族が3人とすれば、十分な空間といえる。「狭い」という意見もあるだろうが「1日も早く出たい」と思わせる程度の住宅が仮設住宅である。(是非、試作品をご覧下さい。意外な広さに驚かれるはずです) 【運用面での提言】 予算的には、大量生産すれば、10m^2サイズの防災ハウスで1個当たり300万円程度で仕上がる。仮に、県ごとに約1000個、常時保管しておいたとしたらどうだろう。各県が協力して被災地に輸送すれば、1週間で4万7千戸の防災ハウスが建つことになり、体育館での避難生活を1週間で終えることができる。避難生活を短期間に抑えることにより精神的、体力的消耗による病気の発生を抑制でき、なにより被災者の精神的立ち直りを早めることができる。備蓄という思想が必要であるが、各県で30億円の予算を確保できれば、倉庫も含め十分可能な対策である。