著者
湯川 夏子 飯塚 真由 岡田 利子 昆布 睦育巳 明神 千穂
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】料理活動は認知症ケアや予防に効果があるとして「料理療法」を提唱し実践研究を進めている<sup>1)</sup>。また現在、地域包括ケアが推進され、地域における介護予防の推進が重要である。本研究では高齢者地域サロンにおいて、健常または軽度認知障害(MCI)の高齢者に対して料理活動を行い、その効果の検証を目的とする。<br><br>【方法】2017年9-10月、高齢者地域サロンにおいて料理活動を合計5回実施した。参加者は1回10-17名、スタッフは4-6名であった。介入前後に参加者に対し、質問紙調査(基本属性、料理に対する意識、主観的QOL)およびMCI検査(タブレット型の物忘れ相談プログラム・日本光電社製)を行った。毎回の活動後には感想用紙の記入を求めた。また、スタッフによる参加者の観察記録(筆記、ビデオカメラ)を行うと共に、「料理療法グループ全体評価表」<sup>1)</sup>に基づく各回の評価をおこなった。<br>【結果】参加者は独居者が多く、集まって料理や食事をすることに対する満足度が高かった。4回以上参加した7名(うち1名男性)は、全員健常な高齢者であり、MCI検査結果に変化はみられなかったが、主観的QOLは、4名が向上した。また、回毎に対人関係が向上したという感想が増加し、協調する姿がみられる等、料理活動により人間関係の構築がなされた。一方、既存の全体評価表では満点になることが多かったため、毎回目標を立てて実施・評価するPDCAサイクルの構築が重要であると示唆された。また今回の結果を受けて、健常な高齢者を対象とした活動に沿う評価表改良案を作成した。以上より、料理活動を介した居場所づくりは、高齢者のQOLを高め、介護予防に寄与すると期待される。<sup>1) </sup>湯川, 前田, 明神:認知症ケアと予防に役立つ料理療法, クリエイツかもがわ (2014).