著者
岡田 啓子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.9, pp.173-185, 2015-03-25

不妊治療後に妊娠した妊婦は自然妊娠の妊婦と比べて,情緒不安定になりやすく,その後の育児においても子どもを過保護に扱ったり,過剰な期待をするといった育児への不適応が指摘されていた。これらの研究では不妊そのものを妊娠や育児への不安の主な原因としているが,不妊であったこと自体が問題となるだけではなく,治療中の経験がその後の妊娠に対する感情に影響を与えると考えるべきであろう。本稿では不妊治療中のストレスや夫婦関係が妊娠中の女性や男性に与える影響を明らかにすることを目的とし,検討を行った。不妊治療を経て妊娠した女性は,妊娠したことに対して肯定的な感情を強く持つ反面,それを強く望んでいた者ほど流産に対しての不安が高いという先行研究が支持されたほか,不妊治療中に家族との関係によって生じたストレスと妊娠への感情との間に関連が認められた。一方,男性に関して不妊治療経験の有無と“親になること”という意識との間に関連は認められなかった。しかし,不妊治療期間における夫婦関係のあり方によっては,エリクソンのいう「世代性」への意識が強められることがうかがえた。