- 著者
-
岡田 弘司
- 出版者
- 関西大学大学院心理学研究科心理臨床センター
- 雑誌
- 関西大学心理臨床センター紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.23-30, 2022-03-15
医療では傷病などにより心身の状態を著しく崩した者に治療やケアを行うことが多く、危機的状況に陥った者といかに適切に関わり、その者の回復や安寧に繋げていくかが重要な課題となる。Fink,S.L.(1967)の提唱した危機モデルは危機克服のためのプロセスを①衝撃、②防御的退行、③承認、④適応の4つの段階で示した理論であり、かねてよりその有用性などが本邦においても注目されていた。本研究ではここ5年間に本邦で発表された当危機モデルに関する最新の研究を検索し文献考察を行って、当危機モデルの適用性についてなど検討した。その結果、事例研究を中心に看護系の分野で多くの論文が発表されていることが確認され、癌や難病など厳しい病状にある患者やその家族に対し当危機モデルが活用され、適切な介入や有効な支援の実践などに寄与していることが明らかになった。また当危機モデルの用い方は様々であるが、中でも当危機モデルを多職種連携やチーム医療の観点で見ると公認心理師に期待される役割も想定され、プロセスの段階を同定する心理的アセスメントやプロセスの進展を支援する面接の施行などが大切になると考えられた。また公認心理師が当危機モデルの検証や発展のための研究に従事することも意義深いと思われた。