著者
中川 昇 岡田 政信 南嶋 洋一
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.546-550, 1987-07-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
23

有機ゲルマニウム化合物Ge-132 (2-carboxyethylgermanium sesquioxide) のウイルス感染症に対する防御効果をマウスサイトメガロウィルス (MCMV) 対マウスの系を用いて検討した。ICRマウスにウイルス接種前3日と1日にGe-132をマウス当り10 mg腹腔内投与したあと, 腹腔内に強毒MCMV・Smith株をマウス当り5×105 PFU (約2 LD 50相当) 接種し, 生食水の前投与対照群と比較した。(1) 対照マウスが100%感染死したのに対して, Ge-132前投与群では60%のマウスが生存し,(2) 肝で増殖したウイルス量が対照の約115に抑制され,(3) 血中IFN値, 2-5 A合成酵素活性値の上昇が認められたが,(4) 脾細胞中NK活性は変化しなかった。 Ge-132はin vitroではウイルス不活化作用およびウイルス増殖抑制作用を示さなかったことから, マウスにおけるMCMV感染防御効果は, Ge-132投与により誘起されたインターフェロン (IFN) を介し生体の感染防御系が賦活化されたことにあると考えられた。 肝はMCMV感染の最も重要な標的器官であり, Ge-132によって誘導される主としてIFNが, 肝におけるウイルスの増殖を感染死にいたる閾値以下に抑制することによって, マウスは感染死を免れるのであろうと推定された。