著者
岡田 浩佑 山口 弓子 鎌田 七男 岡田 正浩 加藤 重子 佐々木 秀美
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.396-403, 2016-10-25 (Released:2016-11-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的:われわれは,多剤処方(Polypharmacy)に関する研究の一環として,高齢者に対する必要性の低い薬剤,特に抗潰瘍薬につき検討を行った.方法:原爆養護ホーム神田山やすらぎ園の2012年4月~2015年11月の入園者160名について,必要性の低い薬剤,特に抗潰瘍薬の節減に関連して,プロトンポンプ阻害薬の長期間内服者の便ピロリ菌抗原,血中抗体,血清ペプシノゲンIおよびIIを測定した.結果:2012年4月と2014年8月時点での6剤以上使用者は,それぞれ55.2%と49.0%で,抗潰瘍薬の使用者は,それぞれ50.0%と49.0%であった.抗潰瘍薬使用者のうち20名について,ピロリ菌やペプシノゲンについての測定を行ったが,その測定結果は抗潰瘍薬使用の継続や中止の判断に役立たなかった.むしろ,自覚的症状,他覚的徴候にもとづき中止を試みたところ,抗潰瘍薬使用者の多くが中止可能で6.0%になった.結論:特別養護施設において,多剤処方の形で最も頻繁に使用されている抗潰瘍薬は,入園者がステロイド薬服用中その他特別の状態であることを除けば,自覚症状や他覚的徴候のもとに多くの場合,使用中止が可能であると判断された.すでに実施した利尿薬節減による転倒骨折の減少効果,高カリウム血症治療薬の使用中止,造血薬葉酸の使用中止などを参考に,今後,高齢者の睡眠薬,下剤,その他の薬剤使用の改善について検討することが必要である.