著者
岡田 清己 遠藤 克則 野垣 譲二 川田 望 吉田 利夫 佐藤 安男 森田 博人 熊谷 振作 北島 清彰 岸本 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1000-1005, 1986
被引用文献数
1

過去12年半にわたり経験した腎外傷(皮下損傷)122例を集計し,その即時手術の適応に関し検討を加えた.外傷度分類は腎挫傷,軽度腎裂傷,高度腎裂傷,腎断裂傷,腎茎部損傷に分類した.これは術前の臨床症状と画像診断にて分類した群と,術中の手術所見を合わせて分類した群とを比較すると約4分の1は誤謬を生じていた.今後画像診断学の進歩により診断率は高まるものと期待している.今回の臨床的検討より次のことが要約される.腎挫傷は待期療法が選択される.軽度腎裂傷も手術の必要はなく,待期療法で観察することが望ましい.高度腎裂傷の場合,待期療法では腎感染が増悪し,腎障害が進行し,手術の時期を逸してしまうことがある.そのため,即時手術が必要である.腎断裂傷,腎茎部損傷は待期的に観察せずに即時手術を行うべきである.特に重要なことは,高度腎裂傷との診断が得られたら,即時手術を行うことである.
著者
北島 清彰 斎藤 忠則 清滝 修二 佐藤 安男 森田 博人 岡田 清己 岸本 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.87-96, 1987
被引用文献数
1

1984年12月より1年間に,膀胱摘出後の尿路変向術としてKock回腸膀胱を作製,現在までに17症例に対して行った.患者の年齢は35歳から78歳,男性11例,女性6例,全例悪性腫瘍であり,手術はKock,Skinnerらの方法に順じて行った.Kock回腸膀胱造設術に要する時間は4〜5時間で出血量は100ml以内であった.早期合併症は3例,うち2例は尿貯留槽よりの尿漏出があり再手術,他の1例は薬剤性肝障害で死亡した.術後経過は最長14ヵ月まで見ることができたが,中期合併症(1年以内)として,尿輸出脚に形成したnipple valveに起因するものが最も多く,17例中11例,うちわけは失禁2例,カテーテル挿入困難8例,逆流3例,うち3例に再手術を行った.カテーテル挿入困難は術後2〜4ヵ月の間に急に発生することが多く,原因としては腸重積の滑脱と輸入脚の一部が嚢状に拡張したものであった.尿貯留槽の容量は300ml位が多く,3〜4時間間隔で導尿を行っている.Kock回腸膀胱は手術時間,nipple valveの形成の難しさなど問題点はあるが,電解質のバランスは保たれ,腎機能も異常なく,体外集尿器を必要とせず,現在評価できる14例中12例が快適な生活を送っており,Kock回腸膀胱はすぐれた尿路変向術である.