著者
山下 哲二 岡田 震一 河本 順子 河本 紀一 肥田 和之 國富 三絵 土山 芳穂 杉本 光 和田 淳 四方 賢一 槇野 博史
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.319-323, 2002-05-30
被引用文献数
13 10

症例は71歳, 男性. 45歳時に糖尿病と診断された. 64歳時よりsulfonylurea剤を, 70歳時よりインスリンによる治療を開始した, 1998年1月, 糖尿病性ケトアシドーシスを発症し近医に入院となった. 経静脈的にインスリンが投与されケトーシスは改善した. 皮下インスリン注射による強化療法に変更し, 投与量を漸増したところ早朝低血糖および日中高血糖傾向が強まった. 抗インスリン抗体陽性であり, 精査目的にて当科入院となった. euglycemic hyper insulinemic clamp study にて血糖を100 mg/d<I>l</I>にクランプし0.5 mU/kg/minから10 mU/kg/minへとインスリン注入率を増量したところ, ブドウ糖注入率は2.O mg/kg/minから3.5 mg/kg/minに上昇するのみであった. Total IRiは著明に上昇したが, free lRl はわずかな上昇にとどまった. インスリン減量により, 早朝低血糖は消失し, さらにステロイドホルモン内服投与により, 日中高血糖も改善した. 抗インスリン抗体が早朝低血糖および日中高血糖に関与した症例と考えられた.