著者
寺島裕貴 岡田真人
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013-MUS-99, no.43, pp.1-4, 2013-05-04

大脳皮質聴覚野が担う複雑な情報処理の原理解明に向け,皮質の一様性を根拠に視覚系相同領野のモデルが応用されつつある.しかし,既存研究で議論されてきたのは視覚野神経細胞のうち線形応答を示す単純細胞のモデルに限られており,非線形な複雑細胞に相当する概念については未着手だった.本研究で我々は,視覚野複雑細胞の学習モデルであるトポグラフィック独立成分分析を自然画像の代わりに自然音に適応させた.学習結果である聴覚版「複雑細胞」の特性は,近年聴覚野で発見されたピッチ細胞と同様に“missing fundamental”類似の非線形性を示した.聴覚野ピッチ細胞が視覚野複雑細胞と同一のモデルによる自然刺激学習で獲得可能であるという結果は,両者の計算論的相同性を示唆する.
著者
岡田真由子 金丸隆太#
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

問題と目的 学童保育とは,保護者が就労等によって昼間家庭にいない小学生を対象とし,放課後,土曜日や春・夏・冬休み等の長期休業中の子どもの生活を保障する施設である。学童保育では,家庭に代わる役割が求められるため,学童保育指導員(以下:指導員)にも高い能力が求められる。しかし,労働条件の低さ,職務の不安定さから離職が早く,入れ替わりが激しく,指導員同士の連携,チームワークの形成が難しい。また,指導員の研修,経験加算が不十分で,専門性の向上が求められている。岡田(2017)で,発達障害児,診断の付いていないグレーゾーンの児童の対応に苦慮していること,研修で学んだことが,現場との相違により,現場で生かせていないことが明らかになった。 本研究では,発達障害児・グレーゾーンの児童対応における,指導員の困り感の低減を目指した仕組みづくりとして,サポートブックを作成し,その有用性を検討することを目的とした。方 法 全国の教員・特別支援員向けの資料を参考に,ドラフト版を作成し,現場の指導員にヒアリングし,その結果を踏まえ,完成版を作成した。完成版は,“OKブック”と名付け, 1.はじめに2.このサポートブックの使い方3.発達障害とは4.リソース集5.支援シート6.引用文献・参考文献の6項目にした。A4サイズのリングファイル入れて,取り出しができるようにした。支援シートは,書き込み型にし,知識部分は短く,該当場面ですぐに確認できるように工夫した。OKブックはX市,Y市,Z市の12施設に1冊ずつ配布し1ヶ月間使用させ,60名の指導員に事後アンケートと,インタビューを実施した。アンケートとインタビューで得られたデータから,OKブックの有用性を検討した。結果と考察 OKブックの使用により,指導員の困り感は低減し,指導員に変化が見られた。また,OKブックのプラス面とマイナス面が明らかになった。 OKブックは,適性(向き・不向き)があった。それは,施設の環境的要因,指導員の個人的要因,集団的要因,リーダーのOKブックへの積極性が影響すると考えられる。OKブックを改訂するとすれば,以下のような案が挙げられる。1.発達障害児への対応だけでなく,保護者対応や他児への説明に関する対応場面や対応方法について,多くの事例を提示する。2.支援シートは,1枚のシートにする。指導員の中には,場面ごとのシートにすること,アセスメントシートがいいといった指導員もいた。書くことへの抵抗感をなくすためにも,エピソードを書き込む方法も考えられる。 OKブックを使用してもらうための工夫としては,まず使い方の丁寧な説明が重要である。OKブックの使用で指導員の困り感が減るということを強調して説明し,動機付けを高めることが重要だろう。また,支援シートは毎日書く必要がなく,残しておきたい情報を書くということを必ず伝える必要がある。併せて支援シートに情報を残すことによるメリットを伝えることで,書くことへの抵抗感が減るのではないかと考えられる。 学童保育は,1人の指導員が何人の児童を見るのか,教員や保育士のような限度がない。また,雇用状況が不安定で,待遇も決して良くはないにも関わらず,多くの知識,技能を求められ,大変さや矛盾も生じている。そのため,経験年数を重ねていても,自分の能力に自信が持てない指導員もいる。それは,研修機会の少なさ,職場内に先輩がいないからとも考えられる。高岡・籠田(2017)は,指導員の専門性の向上のためには,学習,成長が必要だと示唆した。その方法論の1つとして,野中らが提唱し,高岡らが加筆した,組織的知識創造モデルがある。本研究ではOKブックを使用した際の,指導員の知識創造モデルを提唱した。 本研究は学童保育に関する研究の進歩の上で,その一歩を踏み出したと言える。本研究の結果を基に,改訂版を作成し,HPで公開する予定である。
著者
岡田真人
雑誌
ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.23-24, 2013-12-31

実験や観測によって得られるデータを少数の説明変数で記述することを目的とする 「モデリング」 は自然科学の重要なアプローチの一つである.スパースモデリングは,高次元データからの説明変数の自動抽出を最適化問題の形に定式化する.本講演では,スパースモデリングの適用例を紹介し,ハイパフォマンスコンピューティングとスパースモデリングの関係を述べる.