著者
加藤 ひろし 岩並 和敏 坂上 竜資 本郷 興人 佃 宣和 川浪 雅光 向中野 浩
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

2年間にわたり歯周病患者のBruxismと咬合性外傷、歯周組織破壊の実態を明確にする目的で研究を進め、次の成果を得た。(1)K6Diagnostic Systemを用いて中程度以上の歯周病患者の顎運動と筋活動を分析した結果、歯周炎患者正常者に比べ閉口運動終末速度と咬みしめ時の筋活動電位が低下しており、歯周炎の進行と対合歯との咬合接触部位の減少にともなってさらに低くなる傾向を示した。(2)睡眠中の顎動運記録装置を作製し、睡眠中の顎運動、咬筋活動、咬合接触状態、咬合接触音を記録し分析した結果、BruxismはAタイプ(grindingに相当)、Bタイプ(clenchingに相当)、Cタイプ(A,Bタイプ以外)に分類でき、Bruxism自覚者はAタイプ、無自覚者はBタイプの出現率が高く、この差が自覚の有無と関係していると思われた。(3)患者が自宅でBruxism(睡眠中の咬筋活動・歯の接触・grinding音)を記録し分析するシステムの改良を行い、ディスポ-ザブルシ-ル型電極と発光ダイオ-ド表示モニタ-装置の使用により正確な記録が可能となった。(4)Bruxismによって生じる咬合性外傷と炎症が合併した場合の歯周組織の変化を明らかにするために,カニクイザル2頭の臼歯を4群にわけて、炎症と咬合性外傷を引き起こし、14週と28週間、臨床的ならびに病理組織学的に観察した結果、歯間水平線維が細胞浸潤により破壊された状態に、咬合性外傷が合併すると、炎症は急速に進行し、高度歯周炎となることが示唆された。(5)Bruxismの原因となる早期接触の客観的診査の目的で、Tースキャンシステムを歯周病患者で検討した結果、センサ-を咬合接触が不安定で誤差が生じやすく、咬合力の弱い者や動揺歯では咬合接触を正確に判定できないなどの問題があり、改良の必要なことが明らかとなった。今後さらにBruxismの客観的診断法と治療法の確立を目指して研究を進めていきたいと考えている。