著者
蔵田 和史 鈴木 奈央 笹本 実 加治木 聡 権藤 加那子 鬼塚 得也 森 智昌 永井 淳 加藤 熈 坂上 竜資
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.406-412, 2011-12-31 (Released:2018-03-20)
参考文献数
27

口臭の原因物質としては,口腔内プラークに由来する揮発性硫黄化合物が特に重要である.現在,種々の口臭抑制剤が市販されているが,このなかでも特にポリフェノール化合物には口臭の抑制効果があることが報告されている.これまでわれわれは,カキノキDiospyros kaki Thunbergの果実より得られた抽出液にトレハロースを加えて作られた消臭剤「パンシルPS-SP®」に着目し,in vitroにおけるPorphyromonas gingivalisに対する静菌作用と消臭作用,さらにメルカプトエタノールに対する消臭作用を報告してきた.そこで今回われわれは,カキノキDiospyros kaki Thunbergの果実より得られた抽出液を限外濾過し,「パンシルPS-SP®」よりもさらにポリフェノール化合物の精製度を向上させたものにトレハロースを加えて作られた消臭剤「パンシルPS-M®」(以下,パンシルと略す)を用いて,口臭の抑制効果を検証することを目的として,被験者100名の口臭を「MS-Halimeter®」(以下,ハリメータと略す)を用いて測定した.まず,起床1時間後に口臭を測定し,この値を基準値(コントロール)とした.その後,蒸留水を嚥下2分後,1.0%パンシル溶液を嚥下2分後と10分後に同様にして口臭を測定した.実験の結果,コントロールと比べて,1.0%パンシル溶液嚥下2分後と10分後では,ハリメータによる口臭測定値において統計学的に有意な減少が認められた(p<0.05).以上のことから,パンシルはin vivoにおいて口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物に対し,消臭効果をもたらすことが明らかになった.
著者
加藤 ひろし 岩並 和敏 坂上 竜資 本郷 興人 佃 宣和 川浪 雅光 向中野 浩
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

2年間にわたり歯周病患者のBruxismと咬合性外傷、歯周組織破壊の実態を明確にする目的で研究を進め、次の成果を得た。(1)K6Diagnostic Systemを用いて中程度以上の歯周病患者の顎運動と筋活動を分析した結果、歯周炎患者正常者に比べ閉口運動終末速度と咬みしめ時の筋活動電位が低下しており、歯周炎の進行と対合歯との咬合接触部位の減少にともなってさらに低くなる傾向を示した。(2)睡眠中の顎動運記録装置を作製し、睡眠中の顎運動、咬筋活動、咬合接触状態、咬合接触音を記録し分析した結果、BruxismはAタイプ(grindingに相当)、Bタイプ(clenchingに相当)、Cタイプ(A,Bタイプ以外)に分類でき、Bruxism自覚者はAタイプ、無自覚者はBタイプの出現率が高く、この差が自覚の有無と関係していると思われた。(3)患者が自宅でBruxism(睡眠中の咬筋活動・歯の接触・grinding音)を記録し分析するシステムの改良を行い、ディスポ-ザブルシ-ル型電極と発光ダイオ-ド表示モニタ-装置の使用により正確な記録が可能となった。(4)Bruxismによって生じる咬合性外傷と炎症が合併した場合の歯周組織の変化を明らかにするために,カニクイザル2頭の臼歯を4群にわけて、炎症と咬合性外傷を引き起こし、14週と28週間、臨床的ならびに病理組織学的に観察した結果、歯間水平線維が細胞浸潤により破壊された状態に、咬合性外傷が合併すると、炎症は急速に進行し、高度歯周炎となることが示唆された。(5)Bruxismの原因となる早期接触の客観的診査の目的で、Tースキャンシステムを歯周病患者で検討した結果、センサ-を咬合接触が不安定で誤差が生じやすく、咬合力の弱い者や動揺歯では咬合接触を正確に判定できないなどの問題があり、改良の必要なことが明らかとなった。今後さらにBruxismの客観的診断法と治療法の確立を目指して研究を進めていきたいと考えている。
著者
戸田 郁夫 加藤 〓 田西 和伸 樋口 幸男 平中 良治 浅野 元広 坂上 竜資 川浪 雅光
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.1146-1152, 1989-12-28
被引用文献数
11

本研究の目的は,夜間睡眠中のbruxismの実態を解明するために,日常臨床に応用できる客観的なbruxismの診査・診断するシステムを開発することである。本システムは記録装置と再生分析装置とからなり,記録装置は,筋電計・加速度計・小型マイクを組み合わせ,左右の咬筋の筋活動・上下の歯の咬合接触・grinding音を同時に記録できるように設計した。被験者には25〜50歳の男性6名を選び,本装置の操作方法を指導し,自宅に装置を持ち帰り,各々5日間繰り返し測定を行った。その結果,このシステムにより,自宅で夜間睡眠中の筋活動・咬合接触・grinding音を同時記録できることが分かり,歯周病患者のbruxismの実態の解明や客観的診断に役立つと思われた。