著者
岩佐 信道
出版者
日本道徳教育学会
雑誌
道徳と教育 (ISSN:02887797)
巻号頁・発行日
no.336, pp.41, 2018 (Released:2020-08-01)

「道徳性を養うこと」という学習指導要領における道徳教育の目標に真剣に向き合うには、そもそも道徳性とはどういうもので、どのように向上、発達していくかを的確に理解する必要がある。かつてこれに真正面から取り組み、中心的な位置を占めたのがコールバーグであり、その道徳性発達段階論であったが、その研究は判断の側面に偏っているとの批判や反省がある。筆者はかつて、こうした反省をふまえ、人間の実生活における道徳性の発達、向上を捉える試みとして、「三方よし」(自分も、相手も、第三者もともによくなるように)という枠組みと、「相互依存のネットワーク」(私たち人間は、すべての存在との密接なつながりの中で、相互に支え合って生きている)というアプローチについて論じた。ここでは、新たな材料を加えてこの2つの考え方をさらに展開し、道徳性発達研究と道徳教育の進展の基礎としたい。
著者
岩佐 信道
出版者
麗澤大学
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.19-32, 2011-03-30

今日、人類は地球的な規模の極めて深刻な諸問題に直面している。これら地球的問題群とでも呼ぶべき問題に対処するには、一文化、一文明にとどまっているかぎり、その解決は困難で、地球を一つのシステムとしてとらえ、その中で人間の倫理、生き方を探求する必要がある。2006年に、地球システム・倫理学会が発足したのは、このような考えからである。この地球的問題群の中でも最重要といえる地球環境問題への対応は、とかく対症療法的となり、いわば「モグラたたき」に終わることが懸念される。今必要なのは、人間観の根本的な変革ではなかろうか。その点で、本学の創立者、廣池千九郎が確立したモラロジーでは、森羅万象はシステムとしてすべて連絡しており、エコシステムの一員である人間は、その宇宙の根本原理としての相互扶助の原理に従うことが必要としている。そして、廣池千九郎は、その実質を、人類の教師と呼ばれる人々の生き方を手がかりに探求し、最高道徳の原理として提示した。したがって、最高道徳は、地球システム倫理の実質を構成するものとして、今後真剣に研究される必要があるといえよう。このような地球システム倫理の教育という観点から、麗澤大学における道徳科学の授業とそれに関する研究結果の意義について論じた。