著者
岩佐 光広
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-29, 2008
参考文献数
28

1980年代以降、生命倫理学は以前にも増して多様なアプローチが混在する状況にある。その代表的なアプローチの一つとして、記述を重視するアプローチを挙げることができる。だが、規範主義的アプローチが主流を占める現状において、生命倫理学における記述の役割は十分に検討されてはこなかった。本稿では、既存の生命倫理学における記述の問題点を、文化人類学の基本的営為である民族誌の認識論、理論、方法論との比較から明らかにしたい。加えて、民族誌における記述と理論の弁証法的な構築過程を考察することで、今後の生命倫理学の議論において民族誌的アプローチが担う重要性を提示したい。