- 著者
-
岩元 保
持留 一成
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.12-14, 1958-05-01
鹿児島県に於ける水稲早期栽培は,その成果が極めて顕著で,其の作付面積も急激に増大しつつあるが,この早期栽培の作況も可成り気象的条件によって支配されることが知られている。結論的には早期栽培の収量は気温の関係よりも,幼穂形成期後の日照の多少がより深い関係を持つものと考えられる。特に鹿児島県の早期栽培は8月下旬の台風害を避けるために農林17号の場合で出穂期を遅くとも7月10日頃迄に持って来るような栽培法がとられているので,幼穂形成期直前から出穂期前後迄梅雨期に遭遇することになり,年によっては乳熟期頃迄かかる時もある。鹿児島気象台の観測した過去20ケ年の平均梅雨入り日は6月4日,梅雨上り日は7月15日になっている。しかし,これらの梅雨入り,梅雨上り,梅雨期間及び梅雨期間申の日照時数を色々調査すると可成りの年次差がみられる。例えば,昭和29年度は梅雨入りが早く,梅雨上りは遅く逆に昭和30年度は梅雨入り遅く,梅雨上りは早くなっており,日照時数についてみると,幼穂伸長発育期間は昭和29年度は約41時間,昭和30年度は約80時間であった。叉豊熟期間は昭和29年度は163時間,昭和30年度は192時間であった。そして作況は昭和29年度は稍々不良,昭和30年度は良好であった。以上の事例のとおり,幼穂形成期後の日照の多少が水稲の作況に影響する所が相当大きいと考えられたので,昭和32年は差し当り,人工的に日照を制限した場合,特に稔実関係にどのような悪影響があるかを簡単に試験したので,其の結果を報告したい。