著者
岩城 秀出洙 梶田 洋一郎 清水 洋祐 山内 民男
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.589-592, 2001-07-20
被引用文献数
4 1

73歳,男性.1999年9月初旬より全身倦怠感と微熱が出現し,当院内科を受診.腹部CTにて左腎下極に3.5cmの腫瘤を認め,ガリウムシンチでの同部の集積像もみられたことから,腎原発悪性リンパ腫の疑いで,1999年11月10日に当科紹介受診となった.検尿所見には異常なく,血液生化学検査ではCRPおよび可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)の軽度上昇と赤沈の亢進以外には異常所見を認めなかった.腹部MRIで,腫瘤はT1強調画像で等信号,T2強調画像で低信号を示し,血管造影では腫瘍性血管は認めなかった.以上の検査結果から,乏血管性腎細胞癌あるいは腎原発の悪性リンパ腫を疑い,1999年12月20日に左腎摘除術を施行した.腫瘤はゴム様硬,淡黄白色均一,充実性腫瘤で,辺縁は不整であったが周囲との境界は明瞭であった.病理組織学的所見にて腫瘤は形質細胞,小リンパ球,好中球,好酸球の浸潤を伴う線維性の組織から成り,炎症性偽腫瘍と診断された術後経過は良好で2000年1月18日に退院となった.腎に発生した炎症性偽腫瘍は極めて稀で,自験例は内外で15例目である.