著者
岩尾 祐介
出版者
中村学園大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究目的】近年、学内で学生をアルバイト雇用する「学内ワークスタディ」を実施する大学が増えている。2015年度採択の「学内ワークスタディ実施による教育的効果の研究」において、実施大学はさまざまな教育効果を期待していることが明らかになった。しかし同時に、エビデンスに基づいた科学的な効果測定を行っている大学はごく僅かで、「学内ワークスタディ」に昇華できず、単なる「学内アルバイト」に留まっている大学も多く存在することも判明した。そこで本研究では、全国の私立4年制大学から広く情報を収集し、調査、分析を行い、理想的な学内ワークスタディ制度モデルを開発し、全国の私立大学と共有することを目的とした。【調査方法及び研究結果】全国の私立4年制大学にアンケート調査を行い、227大学から回答を受けた。その結果、ワークスタディを全学的に実施している大学は32.9%、一部実施は53.8%であった。約87%と大半の大学が実施しているものの、各大学において「アルバイト学生の管理及び運営体制(22.5%)」、「授業と学内アルバイトの調整(18.5%)」、「予算的問題(16.3%)」(※複数回答)とさまざまな課題があることが明らかになった。また、私立大学等経常費補助金に学内ワークスタディ事業支援があり、要件を満たせば一定の補助金を受けられるが、この補助金は学生の経済的支援に主眼を置いていることから、学生の成長や教育効果を期待する大学の方針と適合せず、学内ワークスタディ実施大学のうち申請しているのは21.5%に留まっていることも明らかとなった。【研究成果】アンケート調査をとりまとめ、研究結果を九州地域大学教育改善FD・SDネットワークQ-conference2016にて発表するとともに、「学内ワークスタディハンドブック」を制作し、全国私立4年制大学に送付することで研究成果を広く還元した。
著者
岩尾 祐介
出版者
中村学園大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

文部科学省の予算重点事項に挙げられていることもあり、近年、学内ワークスタディを実施する大学が増えている。しかし、それがどこまで広がりを見せているのか、またどのような教育的効果があるのか、これまで明らかにした論文等がないことから科学研究費に申請し、研究を行った。まずは全国の私立大学にアンケート調査を行い、185大学から回答を受けた。その結果、ワークスタディを全学的に実施している大学は37.6%、一部実施は46. 3%であり、実施していない大学は16.1%であった。また、実施していない大学のうち、80.0%が今後の実施を予定・検討しており、ワークスタディが全国的に普及しつつある状況が明らかになった。また、ワークスタディ実施の意図としては「経済的支援75.8%」、「教職員の負担軽減63.2%」、「就業経験43.2%」、「学内リーダー育成37.9%」、「就職活動でのPRポイントに23.2%」と、単なる労働力や経済的支援として以上の期待が込められていることも明らかになった。ただし、ワークスタディの教育効果を実際に分析しているのはわずか2.6%であり、実施の意図を科学的に測定できていない大学が大半であった。今後はさらにワークスタディの実施大学・実施規模が拡大することが予想されるが、教育効果を期待するのであれば、各大学において分析を行い、エビデンスに基づいて実施する必要があると思われる。研究成果については、資料にまとめアンケート回答大学に送付した。本学では平成25年度よりワークスタディを全学的に開始しており、平成26年度の数値を分析したところ、週5~10時間勤務した学生は、前年度に比べ約8ポイント成績が上昇していた。また、学生アンケートでは「大学への愛着」が増したとの回答が多くみられ、週5時間以上勤務学生の退学率は0%となるなど、教育的効果に加え、退学率の減少効果も判明した。