著者
鳥居 方策 岩崎 真三
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-39, 1995-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18

交叉性失語には, 右半球内の言語表象の組織化が広範で異常なもの (異常交叉性失語) と, 通常の非交叉性失語の際の左半球内の組織化の鏡像を呈するもの (鏡像交叉性失語) とがある.前者は早期発達段階における左半球機能の故障によるものであり, 右半球内の損傷部位と関係なく, 非流暢性発話, 失文法など一定の症状を呈しやすいとされている.後者は遺伝を含む生物学的素因によるものであり, 症状と病巣部位との関係は左半球損傷による非交叉性失語とよく対応する.一方, 交叉性失語の合併症状の研究から, 種々の高次大脳機能の交叉の起こりやすさが問題にされ, 言語機能の方が視空間機能よりも交叉しやすいことが分かった.近年は, 交叉性「右半球症候群」ないし機能側在性の逆転 (reversed laterality) なる名称のもとに, 稀有な症例が報告されているが, これらの側在性の逆転の原因としては生物学的素因の関与が想定されることが多い.