著者
岩崎 美香
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.93-113, 2013 (Released:2019-08-07)

臨死体験は、典型的には死に近づいた人や何らかの 強い危機状態にある人に起こる、超越的で神秘的な要 素を帯びた体験である。本論考では、半構造化された インタビュー調査から得られた17例の日本人の臨死体 験事例に関して、臨死体験による死生観の変容の特色 を明確にするために、臨死体験者と、臨死体験を伴わない生命の危機状態から回復したガンの患者との比較 を試みた。ガンからの回復者には、死という終わりを 見据えて生きる態度が見られ、死のこちら側を包括す る時間意識が形成されていたのに対し、臨死体験者は 死の先の領域を意識し、死の向こう側を包含する時間 意識を獲得していることがわかった。結論として、臨死体験は個人の死生観の拡大を促していることが導かれた。
著者
岩崎 美香
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.105-123, 2016 (Released:2019-08-06)

臨死体験は臨死体験者にその後もさまざまな影響を与 えることが、主に欧米の臨死体験研究の分野で示され てきた。本研究では、ほとんど研究されてこなかった 日本人の臨死体験後の「日常への復帰」のプロセス全 体を、19事例の調査データを修正版グラウンデッド・ セオリー・アプローチの手法を用いて検討した。臨死 体験後には、非日常的な体験を整理し、意味づけ、調 整して日常に適応していくことや、さらには臨死体験 とその影響を消化しながら社会の中で新たな活動を始 めることがみられた。「日常ヘの復帰」のプロセスは、 日常への適応のプロセスであると同時に、非日常的な 体験を調和的に日常に還元していくプロセスであるこ とが浮かびあがった。 日本人の臨死体験後の分析結果は、アメリカの事例に 基づいた臨死体験後の研究と、事後効果、臨死体験者 の困難、プロセス展開といった点で重なりをみせ、臨 死体験後にある程度共通したパターンがある可能性が示唆された。