- 著者
-
岩崎 美香
- 出版者
- 日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
- 雑誌
- トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.105-123, 2016 (Released:2019-08-06)
臨死体験は臨死体験者にその後もさまざまな影響を与 えることが、主に欧米の臨死体験研究の分野で示され てきた。本研究では、ほとんど研究されてこなかった 日本人の臨死体験後の「日常への復帰」のプロセス全 体を、19事例の調査データを修正版グラウンデッド・ セオリー・アプローチの手法を用いて検討した。臨死 体験後には、非日常的な体験を整理し、意味づけ、調 整して日常に適応していくことや、さらには臨死体験 とその影響を消化しながら社会の中で新たな活動を始 めることがみられた。「日常ヘの復帰」のプロセスは、 日常への適応のプロセスであると同時に、非日常的な 体験を調和的に日常に還元していくプロセスであるこ とが浮かびあがった。 日本人の臨死体験後の分析結果は、アメリカの事例に 基づいた臨死体験後の研究と、事後効果、臨死体験者 の困難、プロセス展開といった点で重なりをみせ、臨 死体験後にある程度共通したパターンがある可能性が示唆された。