著者
花宮 廣務 松浦 健次 岩本 博之
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.531-540, 1998-07-31
参考文献数
12
被引用文献数
3

1996年5月22日02時過ぎ, 大分県西部の玖珠町・九重町の狭い範囲で突風が吹き, 住家の一部損壊129棟等の被害が6か所で発生した.被災直後の現地調査では, 一部で発散性気流によるとみられる被害形状の他, 一定方向に指向性をもった被害痕跡が認められた.この突風は, テイパリングクラウド域内で発達した積乱雲群が通過する際に発生したもので, 積乱雲群に対応して大きさが約40kmのメソ擾乱が解析された.この突風を, 被害の形状や気象解析の結果, 積乱雲の下で地上付近に破壊的な風の吹き出しを起こす強い下降気流であるダウンバーストと結論づけた.今回のダウンバーストは, これまでほとんど報告例のない深夜・山間部で発生した事例であった.今事例から, テイパリングクラウドを伴うような活発な対流活動を引き起こすメソ擾乱が存在し, 大気中層に乾燥域が存在するような場合, 深夜においてもダウンバーストが発生することが示された.