著者
花宮 廣務 松浦 健次 岩本 博之
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.531-540, 1998-07-31
参考文献数
12
被引用文献数
3

1996年5月22日02時過ぎ, 大分県西部の玖珠町・九重町の狭い範囲で突風が吹き, 住家の一部損壊129棟等の被害が6か所で発生した.被災直後の現地調査では, 一部で発散性気流によるとみられる被害形状の他, 一定方向に指向性をもった被害痕跡が認められた.この突風は, テイパリングクラウド域内で発達した積乱雲群が通過する際に発生したもので, 積乱雲群に対応して大きさが約40kmのメソ擾乱が解析された.この突風を, 被害の形状や気象解析の結果, 積乱雲の下で地上付近に破壊的な風の吹き出しを起こす強い下降気流であるダウンバーストと結論づけた.今回のダウンバーストは, これまでほとんど報告例のない深夜・山間部で発生した事例であった.今事例から, テイパリングクラウドを伴うような活発な対流活動を引き起こすメソ擾乱が存在し, 大気中層に乾燥域が存在するような場合, 深夜においてもダウンバーストが発生することが示された.
著者
桧 学 中西 和仁 岸本 誠司 牛尾 信也 北村 溥之 東辻 英郎 林 正彦 玉城 進 上原 範子 松浦 健次郎 西条 秀明
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4special, pp.537-563, 1981 (Released:2011-11-04)
参考文献数
25

におい刺激でおこるめまいの機序を明かにし, その診断法, 治療法を開発する目的で一連の検査が行われ, 次の成果がえられた.(1) におい負荷平衡試験を考案した. この検査では, アリナミン (Diallyl sulfide) 溶液2ml (10mg) のアンプルより1mlをとり出し, それをしみこませた綿花 (1cm3) を被検者の鼻孔前1cmの箇所におき, 口を軽くとぢ, 安静呼吸で60秒間鼻呼吸を命ずる. 刺激中止後10分で愁訴, とくにめまいの変動を問診で確かめ, 各種平衡機能検査で客観化する.(2) (1) で述べた検査を正常成人に実施したがめまいの誘発や平衡失調の出現はなかった. しかし, 頭頸部外傷によるめまい例に施行すると, 次の成績がえられた.1) 受傷後, ある種のにおい物質に過敏となり, それを嗅ぐとめまいをおこした経験のあるものにのみ上述の平衡試験は陽性所見を示した.2) におい負荷平衡試験が陽性所見を示したものはすべて“アドレナリン負荷平衡試験; 桧, 他”が陽性所見を示した. この際, 両者の平衡試験で誘発される平衡失調は, その潜時, その形において相似する傾向を示し, 何れも delayed response を示す傾向が強かった.3) におい刺激で誘発される平衡失調型は病巣の局在と密接に相関した.4) 上肢小脳症状検査で陽性所見を示したものはにおい負荷平衡試験が陽性であることが多く, かつ前者の症状がつよいものほど後者の試験の陽性頻度が高かった.5) 我々が発表した“心因性めまい検出を意図した平衡試験”でA型平衡失調 (心身症型) を示すものは, におい負荷平衡試験で陽性所見をうることが多かった. しかし, A型平衡失調を示すものでも後者の平衡試験が陰性のものもあり, B型平衡失調 (非心身症型) を呈するものでも後者の平衡試験が陽性であることが少なくなかった.6) におい刺激で誘発されるめまい. 平衡失調の治療には cloxazolam (Benzodiazepime 系 minor tranquilizer) は効果がある. しかし, 小脳機能異常を有する例ではその効果を期待しがたい.以上の成績とこれまでにえた動物実験の成績より次の結論をのべた.(1) におい刺激でめまいが誘発される機序のうち, 大脳辺縁系 (とくに扁桃核) 中にふくまれる交感成分の活動性亢進は重要な因子である.(2) におい刺激で誘発されるめまいの機序のうち, 小脳は primary neural element ではない. しかし, その何れかの神経要素に作用し, 機能異常を助長して, におい刺激によるめまい・平衡失調の出現に促進的役割を果す.(3) 心身症によるめまいの機序とにおい刺激で誘発されるめまいの機序は overlap し, 相互に影響を与える可能性はあるが, それぞれの機序が独立した面をもつことを肯定すべきである.(4) 中枢神経系の交感神経成分の活動性抑制を目的とする操作はこの種めまい. 平衡失調の治療法として有用性がある.