著者
岩本 有加
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.145-153, 2005-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

縄文時代早・前期人の骨形態的特徴のひとつとして,扁平脛骨が知られているが,この特徴はすべての早・前期人に見られるわけではない.今まで扁平脛骨の成因についてはいくつかの要因が提案されているが,生活習慣に深いかかわりをもつ環境要素,つまり遺跡の立地条件からの議論は少ない.本稿では,脛骨の扁平度と環境要素との関連性を明らかにするために,脛骨の中央横断示数と遺跡周辺の起伏量との関連を検討した.その結果,起伏量の小さな遺跡から出土した人骨については,扁平脛骨が見られないことがわかった.それに対し,小起伏丘陵と大起伏丘陵に立地する遺跡から出土した脛骨は,扁平度が強い.なかでも小起伏丘陵に立地する遺跡から出土した脛骨については,強度の扁平脛骨が見られた.したがって,脛骨の形態は遺跡の立地条件と密接な関係があると考えられる.