3 0 0 0 OA 血液毒性

著者
岩瀬 裕美子 筒井 尚久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.132, no.6, pp.343-346, 2008 (Released:2008-12-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2

薬物誘発性の代表的な血液毒性として,赤血球減少(貧血),白血球減少,血小板減少がある.その主な機序として,造血器における造血系細胞の分化増殖過程への障害と末梢における成熟細胞の破壊が考えられている.医薬品の研究開発では,実験動物を用いた一般毒性試験の中で,末梢血を用いた血液学的検査により血液毒性を日常的に評価している.加えて,フローサイトメトリーを用いた造血系細胞の解析は,薬剤誘発性の血液毒性の機序推定に有用と考えられる.また,薬物による造血系細胞の分化増殖能への影響を調べるため,コロニー形成試験や細胞内ATP含量を指標に求める実験(ATPアッセイ)が行なわれている.近年,臨床における血液毒性を予測するため,in vitroのコロニー形成試験とin vivoの毒性試験の結果から算出されるモデルが提示されており,前臨床段階におけるリスク評価に有用と考えられる.
著者
岩瀬 裕美子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

2012年11月にStep 2に到達した「ICH S10:医薬品の光安全性評価ガイドライン(案)」では,光安全性評価を実施する要件の一つとして,290 - 700 nmの波長において吸収がある有効成分と新規添加物について光安全性評価を行うことが合意された。しかしながら,光照射後における活性酸素の生成や組織分布を根拠とすることについては,日本と欧米当局間で考え方が異なっている。光安全性の評価が必要になった場合には,<I>in vitro</I>試験,<I>in vivo</I>試験,臨床試験のいずれかで判断することになるが,その実施にあたり,化合物の光化学的特性や臨床適用経路を考慮して,適切な試験系を用いてリスク評価を行うことが必要である。<I>in vivo</I>光毒性試験を実施する場合,現時点ではバリデートされた試験系がないことから,医薬品開発者は,各自で適切であると考えられる試験系(動物種,投与回数,光照射条件等)を選択する必要がある。光毒性評価に際し,一般的に皮膚への作用を評価するが,例えば全身に曝露される医薬品の場合,可視光域に光吸収をもつ化合物については,皮膚だけではなく網膜へのリスク評価も必要となる。一方,光アレルギー性については,ヒトにおける予測性が不明であることから,非臨床試験は推奨されていない。光化学的特性や光安全性を評価する方法の選択は,原則として医薬品開発者の判断で行うことになるが,ケースバイケースで規制当局との検討も可能である。本ワークショップでは,医薬品の光安全性評価における留意点,当局の要求レベル,ICHブリュッセル会議(2013年6月)における議論等について紹介する予定である。