著者
岩田 人美 岡崎 敦
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.94-97, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
13

帯状疱疹後神経痛(以下,PHN)治療中に発症したcrowned dens syndrome(以下,CDS)の診断に難渋した症例を経験したので報告する.症例は78歳女性.左胸部に発症したPHNのためブプレノルフィン口腔粘膜錠(FTB-8127)の第3相臨床試験に参加した.治験開始後1週間でPHNの痛みは軽減したものの,強い頸部痛,後頸部の熱感と頭部後屈制限が発現した.咽後膿瘍や髄膜炎を疑がったが諸検査から否定され,脊椎CTでは,環椎横靱帯に淡い石灰化沈着があり,CDSと診断した.非ステロイド性抗炎症薬投与を行い1週間後には後頸部痛は消失した.CDSは,急激に発症し,強い頸部痛,嚥下痛と頭部後屈制限を呈する疾患であり,確定診断は強い炎症反応と歯状突起周囲環椎横靱帯の石灰化で行う.急激に発症し,強い頸部痛と頭部後屈制限を呈する症例ではCDSを念頭に置く必要がある.