著者
林 耕司 松本 幸子 岩立 志津夫 小島 哲也
出版者
Japanese Association of Communication Disorders
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.58-68, 1989
被引用文献数
3 6

本研究は図形シンボルを使った人工言語システム(NSL86)による言語発達遅滞児への言語訓練の可能性を検討する目的で行なわれた.対象は訓練開始時CA9:2の精神発達遅滞のある発語困難児である.訓練前の言語評価の後,単語,2語連鎖,3語連鎖の順に訓練を開始した.理解と表出を並行して訓練した.単語訓練で学習されたシンボルは順次コミュニケーションボードに載せ,日常での会話に使用できるようにした.約15ヵ月の訓練を通して,計96語(名詞68語,動詞22語,形容詞6語)の単語と,「動作主+動作」「対象+動作」「動作主+対象+動作」の3構文の学習が成立した.全体を通して理解より表出で正答率が高い傾向が見られた.訓練室や家庭でコミュニケーションボードによる自発的で積極的な会話も可能になった.これらの結果から,言語訓練手段としてのNSL86の可能性について考察した.