著者
田口 敦子 備前 真結 松永 篤志 森下 絵梨 岩間 純子 小川 尚子 伊藤 海 村山 洋史
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.582-592, 2019-09-15 (Released:2019-10-04)
参考文献数
16

目的 地域で介護予防活動を行う住民を養成する,介護予防サポーター養成プログラムの多くは,市町村の経験値で組み立てられている現状がある。そのため,必ずしも効果的・効率的に養成を行えている市町村ばかりではない。本稿では,まず,文献検討を行い,養成プログラムのプログラム内容や評価指標等を定める視点を明らかにした。その上で文献検討を基に養成プログラムを作成し,効果を検討した。方法 養成プログラムの文献検討を行い,その結果を基に養成プログラムを作成した。岩手県大槌町を対象地域とし,2017年6~9月に地域包括支援センターの保健師3人と研究者4人とで,養成プログラムを作成した。その後,2017年10~11月に養成プログラムを実施した。評価では自記式質問紙を用い,毎回の終了後に満足度等を尋ねたプロセス評価と,全プログラム前後に,地域課題の理解度等を尋ねたアウトカム評価を行った。活動内容 文献検討から,養成プログラムは,企画者によって予め介護予防サポーターに求める活動が定まっているタイプ(タイプA)と,活動内容を参加者と一緒に具体的に考えていくタイプ(タイプB)の二つに分けられた。プログラム内容の特徴として,タイプAでは,プログラム終了後に介護予防活動に移るための具体的な知識や技術の習得を目的とした内容が多かった。タイプBでは,地域課題の認識を高める講義や演習,先駆的な活動の見学等,プログラム終了後の介護予防活動の内容を住民が考えて具体化できるような内容が多かった。 文献検討を踏まえ,大槌町では,地区の状況に応じた介護予防サポーターの活動方法を参加者が検討し取り組むことが重要であると考え,タイプBを参考に養成プログラムを検討した。アウトカム評価では,解析対象は12人であった。男性2人,女性10人,年齢は71.4±10.0歳[範囲:53-88]であった。プログラム前後のアウトカム指標の平均値の変化は,地域課題の理解度では3.1→4.1(P=0.046),自分自身の介護予防に取り組む自信では3.4→4.0(P=0.035)と有意に上昇していたが,地域の介護予防に取り組む自信では3.1→3.5(P=0.227)であり有意差は認められなかった。結論 文献検討で養成プログラムの目的や内容,評価指標等の視点を明確にし,その結果を基に実施したプログラムで一定の効果を得ることができた。