著者
行木 瑛子 岩﨑 典子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.71-85, 2019-12-25 (Released:2021-12-26)
参考文献数
22

本稿はジャンル準拠の初級日本語クラスでのオノマトペ指導の実践報告である。オノマトペが特定のジャンルで特に有用なことに注目し,広告 (CM) というジャンルを取り上げ,翻訳活動を使った複言語教育 (学生の母語を含む全ての言語資源の動員を促す) アプローチで実践を行った。主眼においた指導目的は,オノマトペが特定のジャンルで効果が発揮される語彙であるという意識と,その効果がどのようなものであるかについての感覚を培うことである。本実践では,多様な母語や文化背景の初級レベルの19名の学生が参加し,それぞれが言語間の比較や翻訳を通して自分の有する既存の言語・文化資源を活用した。授業の録音データ,学生の振り返り,学生のCM翻訳の第三者による評価を分析した。その結果,CMで使われたオノマトペの意味や用法のみならず,CMにおけるオノマトペの効果や有用性についても初級の段階から考えることができ,オノマトペの意識向上につながったことがわかった。