著者
出口 雄也 高柳 あずさ 豊増 展子 岸 智裕 長岡(浜野) 恵 長岡 寛明
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-227, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】近年、禁煙補助剤としてニコチン含有のパッチやガム、トローチの利用者が増加している。タバコの場合、ニコチンは肺から吸収されるが、ガム、トローチの場合、消化器系から吸収される。タバコの主流煙には発がん物質であるタバコ特異的ニトロソアミンの4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone (NNK)やN-nitrosonornicotine(NNN)などが含まれていることが知られている。禁煙補助剤はタバコ特異的ニトロソアミンを含有していないが、これらを経口摂取した場合に、胃内で亜硝酸との反応によりタバコ特異的ニトロソアミンを生成し、変異原性を示すことが考えられる。そこで、本研究では亜硝酸塩濃度、反応液のpHを変化させることにより、ニコチンガムの亜硝酸処理生成物の変異原性をAmes試験により検討した。【方法】ニコチンガム(2個分:ニコチン約25 µmol)に25 µmolあるいは250 µmol(10倍量)の亜硝酸ナトリウムを添加した緩衝液中(pH 3.0、4.0、5.0)に溶解し、37℃で60分間反応させた。反応物を酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮したものをDMSOに溶解し、Ames試験の試料とした。Ames試験はプレインキュベーション法で実施し、ラット肝臓S9mixによる代謝活性化法を併せて実施した。菌株にはTA98株、TA100株を用いた。【結果】ニコチン及びニコチンガムの変異原性はTA98株、TA100株ともに各緩衝液(pH 3.0~5.0)において陰性であった。しかし亜硝酸処理したニコチン及びニコチンガムの変異原性は、pH 3.0の緩衝液で10倍量の亜硝酸ナトリウムと反応させた場合に陽性であった。このことから、ニコチンガムで禁煙が成功しない場合には、長期間の服用は避けるべきであることが示唆された。