著者
岸野 重信 小川 順
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.738-744, 2013-11-01 (Released:2014-11-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

乳酸菌は,プロバイオティクスとして様々な機能が報告されている馴染みの深い腸内細菌の一種である.しかし,腸内細菌に特異な様々な代謝についてはあまり研究がなされていない.筆者らは,乳酸菌の脂肪酸代謝を活用した共役脂肪酸生産について詳細に解析していく過程で,乳酸菌の不飽和脂肪酸飽和化代謝の解明に至った.本代謝は,複数の酵素が関与する複雑な代謝であり,特異な構造を有する希少脂肪酸を中間体としていることを明らかにした.また,これらの中間体の効率的な生産法を検討し,新たな希少脂肪酸ライブラリーの構築に成功した.
著者
岸野 重信 米島 靖記 小川 順
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.133-138, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
12

食事より摂取した脂質は宿主体内で代謝され,エネルギー源や生体膜分子として利用されるほか,シグナル伝達物質としての役割も担う。また,脂質は宿主と共生関係にある腸内細菌によっても代謝され,その代謝で特徴的に生じる脂肪酸が宿主の脂肪酸組成に影響を与えていることが明らかとなり,一般的に摂取量の多い脂肪酸であるリノール酸などの食事脂質に由来する脂肪酸の腸内細菌代謝物に様々な生理活性が報告されている。このように,これまで栄養素として考えられてきた脂肪酸が宿主及び腸内細菌によって代謝されることで様々な生理活性を発揮する可能性が示唆されており,これら脂肪酸を利用した医薬品及び機能性食品の開発や腸管内で機能性脂肪酸を産生するプロバイオティクスの開発が期待される。我々は,腸内細菌が産生する脂肪酸の内,リノール酸から代謝される初期代謝産物10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid(以下HYA)について,食品向けの実用化開発を現在実施しており,本稿ではHYAの機能と実用化に向けた取り組みについて紹介する。
著者
岸野 重信 小川 順
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.58-65, 2017-06-26 (Released:2018-08-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1

食品成分の代謝には、宿主の代謝のみならず、腸内細菌による代謝が少なからず関わっている。したがって、腸内細菌による食品成分の代謝を把握し、代謝産物が健康に与える影響を評価することが、健康維持のためにも重要である。本総説では、脂質、特に不飽和脂肪酸の代謝に関する最近の知見について紹介する。食用油脂に広く含まれているリノール酸が腸内細菌の代表でもある乳酸菌により飽和化される新規な代謝が見出され、水酸化脂肪酸、オキソ脂肪酸、共役脂肪酸などが代謝中間体として存在し、さらにこれらの代謝中間体が宿主組織において腸内細菌依存的に存在することが明らかとなった。また、これらの代謝中間体が、脂質代謝改善作用、抗糖尿病作用、腸管上皮バリア保護機能、抗炎症作用、抗酸化作用など、様々な生理機能を有することも見出している。これらの知見は、腸内細菌の脂肪酸代謝に依存して生成する特異な脂肪酸が、宿主の健康に何らかの影響を与えている可能性を示している。さらに、様々な不飽和脂肪酸代謝に関わる乳酸菌由来酵素群を活用することにより、様々な修飾脂肪酸を生産することが可能となることから、今後さらなる機能性脂肪酸開発が期待される。