著者
島永 和幸 佐々木 常和 岡田 芳男 島永 嵩子
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.207-222, 2007 (Released:2009-06-17)
参考文献数
22

目 的:産業経済から知識創造経済への経済構造の変化のもとで,企業価値創造の推進力としての研究開発マネジメントが大きく注目されている。中国において研究開発の重要性に対する認識が高まりつつある中で,製薬企業は他業種に比べて積極的に自主開発を行っている。しかしながら,実証的な研究はほとんど行われておらず,その実態はブラックボックスになっている。そこで,中国の製薬企業を対象に研究開発マネジメントに関する実態調査を実施し,企業の属性ごとに研究開発戦略や研究開発従事者のマネジメントに差異がみられるかを明らかにすることを目的とする。対象と方法:2006年に中国において実施した質問票調査の分析を行った。中国の製薬企業2,393社を対象に,地域別,取扱い商品別,規模別に約1,500社をそれぞれ比例抽出し,計270票の有効回答を得た(回答率18.0%)。分析にあたって,主成分分析を用いて中国の製薬企業の属性を明らかにし,主成分得点の結果からクラスター分析を行う。クラスター分析によって得られた中国の製薬企業の類型ごとに,組織的なマネジメント,創造性を発揮する環境づくり,専門能力の向上,およびモチベーションの刺激についてどのような差異がみられるのかを分析した。結 果:中国の製薬企業の類型化を試みた結果,3つのパターンが見出された。研究開発の実績や志向性の高低によって,研究開発マネジメントに差異がみられる。考 察:現在の中国において,研究開発の実績が低く,かつ志向性が弱い企業が最も多く,全体の45.6%を占めている。製薬企業では,マネジメントの基盤づくりやチームワーク方式,成果主義などを重視している現状が明らかとなった。