著者
廣島 文生 伊東 恵一 寺本 恵昭 島田 伸一 廣川 真男 松井 卓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度-19年度科学研究費申請時に掲げた研究目標(a)-(e)にそって研究成果の概要を述べる.(a)基底状態の縮退度の評価:埋蔵固有値の縮退度の上からの評価を与える一般的な方法を構築した.またスピンを含む場合には対称性から基底状態の縮退度が少なくとも2以上であることを示した.スピンを含むハミルトニアンが生成する熱半群を「スカラーな積分核」で表現し,新しいエネルギー不等式を発見した.(b)基底状態の高次regularityと非存在:新井,廣川との共同研究で任意次数のregularityを示した.また赤外発散があるときには個数作用素の1/2乗の定義域に含まれる基底状態が存在しないことを示した.(c)Gibbs測度の確率論的解析:確率2重積分を含む連続パス空間上の確率測度の族のtightnessをV.Betzとの共同研究で示した.(d)くりこみ理論:場の理論の模型には有効質量が定義される.結合定数で展開したときの係数の発散のオーダーの物理的な予想は対数発散であるが伊東との共同研究で多項式的に発散することを示した.(e)全運動量を固定した模型の解析:ハミルトニアンを汎関数積分表示して解析した.全運動量=ゼロでの基底状態の存在が知られている.我々はこの基底状態が一意的であることを証明した.スピンがある場合には非連続なパス空間上の測度をつかった汎関数積分表示をJ.Lorincziとの共同研究で得た.その結果ある種のエネルギー不等式を示した.またその応用としてスピン-ボゾン模型の基底状態の一意性を廣川と共同で示すことが出来た.